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076 二人も孫です

2015. 12. 6

理修は、地球のある次元から離れる以上、自分が守護の魔女となるべきではないと考えていた。


守護の魔女達は、あの次元に生きる者を一番に想っているのだ。別の次元にあるトゥルーベルの、このサンドリュークを一番に想っている今の理修は、その役目に相応しくないと思うのだ。


だから、いくら愛する夫の口添えがあったとしても、素直に頷ける話ではない。ただ、オルバルト達の思惑も分かる。


「但し条件がある」

「「……へ?」」


王妃として、理修が纏うドレスは、濃紺のシンプルなドレス。成長し、大人の女性となった理修に驚く程よく似合う。


そんな理修に半ば見惚れそうになっていた拓海と明良は、更に魅力的な笑みを見せられた為に、一瞬何を言われたのか分からなかった。


「聞こえなかった?条件があると言ったの」

「……条件……」


いち早く正気に戻った拓海が思わず確認するように呟く。それに理修が頷く。


「私には、地球に生きる者達よりも、この世界の……この国の者達の方が大切なの。勿論、守護の役目は果たせる。けど、もしもこの国と、そちらの次元を天秤にかける事になったら、迷わず役目を捨てて、こちらを優先する事になる。それでも良いというのなら……」


守護の魔女としては半端者でしかなくなる。だが、あの次元を守護するには、力が必要なのだ。


魔法、魔術と呼ばれるものが認知されていない地球では、絶対の守護が必要不可欠。


力を知らない者達を守る為。力を持っている者の平穏を守る為。他の次元から悪意や影響を受ける事がないように守るのだ。


「守護の魔女の役目がどれだけ重要で、今の状態がどれほど不安定か。それは分かっているつもり。私も地球で生まれた者として、力になれる事は誇らしいよ。でも、だからこそ、はっきりと表明しておきたい。全ての想いを向ける事はできない」

「リズ……」


はっきりとこの国が一番だからと伝える理修に、ウィルバートはゆっくりと理修の傍へと向かい、そっとその手を取った。


そんなウィルバートの少し高い位置にある顔を見上げ、理修は優しく微笑む。


「ウィルとこの国が大切なの。想い全部を向ける事はできない」

「っ……ありがとう……」


ウィルバートは、そっと理修の額へとキスを落とす。


理修にとって、この国はかけがえのないものだ。ウィルバートへと想いを向けるようになって三十数年。


ウィルバートの隣にあるということは、王妃になるということ。その覚悟は初めからあった。


理修は、ウィルバートから視線を外すと、拓海と明良を見つめた。


「私はこの国の王妃だもの。これは譲れない。力を貸すだけだよ」


この言葉に、二人は分かっていると笑みを浮かべて答えた。


「それで構わない」

「総帥や姐さん達の本音は、理修と完全に縁が切れるのを避けたいだけだって」


そんな二人の答えに、理修は苦笑する。相変わらず、総帥やジェスラート達魔女は、理修の保護者であるつもりのようだ。


「ふふっ、なら何十年、何百年先に守護の魔女になれる者が現れるまで、お役目を預かる。そう伝えて」

「「よしっ!」」

「よかったな」


ガッツポーズを決める二人に、ウィルバートも笑みを浮かべた。


「あっ、兄さんが笑った……」

「俺らに向けては初めてじゃねぇ?」

「そうだったか?」


理修以外に笑みを見せないウィルバートが、拓海と明良へと笑みを見せた事に二人は驚く。


「ウィルは最近、よく笑うもの。更に人気が出て困るわ」

「心配か?私にはリズだけだ」

「うん。そうして」

「「……魔王……?」」


どう見ても、今の妻を溺愛するウィルバートは、物語によくある魔王像には程遠い。


国でも優しく強い王と認識されている、国民に愛される王なのだ。


「やっぱ、理修の方が魔王っぽいよな……」

「実際、理修を魔王だって認識してる国は多いって、ザサスさんが言ってた……」


ウィルバートに対し、理修への認識は最強の王妃。国の守護神。そんな呼び名がこのサンドリュークでは囁かれている。


その実力は、国民全てがその目で見ているのだ。元々、魔族の国での婚約は闘い。女が男を倒せる程の実力がある所を見せる事で成立する変わった国民性だ。


「婚約の時の儀式で、ウィル兄を倒したのは嘘じゃないんだよな?」

「そう聞いた。理修ならあり得る」


そう表情を引きつらせながら呟く二人に、理修が気付いた。


「なに?」

「「っなんでもない……」」

「変なの」


魔王の代名詞が、理修の名になるのも時間の問題だろうと思う二人だ。


「二人とも、仕事は上手くいってるの?」

「それは、うん……」

「ここへ来るのも慣れたし、魔術の方も順調だ」

「そう」


拓海と明良も、今や立派にリュートリールの孫だ。


「じぃ様の異名に恥じないよう、頼むわね」

「「了解っ」」


リュートリールの後継者は理修だが、孫として誇れるようになるのが、魔術師となった拓海と明良の目標だった。



読んでくださりありがとうございます◎



二人もちゃんと孫をやっているようです。

リズちゃんの方が魔王に相応しく見えているとは……問題かもです。

ウィル様とバランスは取れているのかもしれません。

優しいだけでは王は務まりませんからね。

魔族の王に求められるのは、賢王というだけではいけないのかもしれません。

もう後数回です。

お付き合いお願いいたします。



では次回、また来週(日曜日0時頃)です。

よろしくお願いします◎

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