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075 図書室

2015. 11. 29

サンドリュークの王城へと、拓海と明良を連れて戻ってきたウィルバートは、まっすぐに理修のいる場所へと向かっていた。


「ウィル兄。どこに向かってるんだ?」

「図書室だ。今日は朝から籠っていてな」

「理修が図書室……」

「……」


こんな時、嫌な予感がするようになったのは、理修が魔術師と知ってからだ。


「因みに、なんでかウィル兄さんは知ってる……?」


どうも、理修の行動が信用できない拓海だ。


「知らんな。ただ……恐らく、地球の事を気にしていない訳ではないということだろう」

「どういう意味?」


図書室へと向かいながら、ウィルバートは、理修がここ数日、図書室で調べ物をしながら見せる、難しそうな顔を思い出していた。


「理修が見ているのは、全てリュートリールの手記だ。それも、地球へと渡ってからのな」

「「じいさんの……」」


二人も、リュートリールの手記を読んだ事がある。ただ、それは日本語に翻訳された一部だ。原本は、トゥルーベルの言葉と、癖の強い日本語らしき文字で書かれており、彼らには残念ながら解読不可能だった。


「お前達が持って来た話にも関わる事だろう。心配しなくても、今回は頷くはずだ」


そんな、曖昧な根拠のない期待も、ウィルバートが言うなら上手くいきそうな気がする二人だ。


いつの間にか、三人の目の前には、大きく煌びやかな扉があった。王の間かと錯覚しそうになる程、重厚感のある図書室の扉だ。


「開けてくれ」

「「はっ」」


一見、置物かと思える大きな二人が、その扉に手を掛ける。


「何度見ても、あ・うんの像を思い出すよな……」

「でかいしな……」


そんな感想を持ってしまうのは仕方のない事だ。見た目を裏切らない重さを誇る扉は、ゴぉぉぉっと音をさせながらゆっくりと彼らの手によって開いていった。


大人が五人並ぶくらいの隙間が開くと、そこを通り、ウィルバートに続いて拓海と明良も入っていく。


数歩中へと入った二人は、一瞬、ダンスホールかと思える広さに、眩暈を覚えていた。


「そういやぁ……ここに入ったのは初めてだったな……」

「確かに、あの、あ・うんに挨拶するだけだったかも……」


図書室から理修が出てくるのを扉の前で待っていた事は何度かあったが、中に入った事はなかったと思い出す。


図書室は円型になっており、沢山の階段があった。


「すげぇ……壁が全部棚とか……壁紙かと思ったぜ」


天井は遥か上。中央は大きく切り取った吹き抜けになっており、螺旋階段が二つ。五階、全ての壁には棚。もちろん、棚は壁だけではない。床に整然と並べられた棚も多く、各階にも並んでいるようだ。その二階へと、ウィルバートは真っ直ぐに進んでいく。


この立派な図書室に見惚れていた二人は、慌てて後を追った。


二階へと上がった三人は、棚を避けながら、奥へと向かう。


「リズ」


そう静かに声をかけたウィルバートの前には、開けた場所がある。机と椅子が並び、その一つに多くの本を積み上げ、熱心に本を読む理修がいたのだ。


ふっと顔を上げた理修は、三人を確認すると首を傾げた。


「なに?」

「オルバルト殿の遣いだそうだ」

「そう。そろそろだと思ってたけど、二人を寄越すとはね」


そう言って、呆れたような表情を見せる理修に、拓海と明良は済まなさそうに顔を歪ませた後、若干横へと目をそらした。


この二人の態度に気付いたウィルバートは、苦笑しながら理修へと口を開く。


「私や国に遠慮することはない。リズの負担にならないならば、引き受けても構わないと思うが?」

「……そうね……」


諦めたようなそんな声音に、二人は希望を見出した。


「「ならっ」」


目を輝かせる二人の様子に、理修は笑みを見せたのだった。


読んでくださりありがとうございます◎



急ごしらえな感じで申し訳ない。

なんとかリズちゃんの所へは辿り着けました。

進みませんね……もうシメるだけなのですが……もう少しお付き合いください。



では次回、また来週(日曜日0時頃)です。

よろしくお願いします◎

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