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055 外の状況は

2015. 7. 12

司を追って来た男達は、その戦いぶりを密かに離れて見ていた。


既にこの時、駆け付けた魔族の兵士達が、男達には確認できない距離に散らばって戦っていたのだが、司の勇姿に魅せられた彼らの目には入らなかった。


司の武器は剣だ。それも、大きな大剣だった。装飾も見事で光を集めているような錯覚を起こさせる。


男達は、その剣を見事に扱う司を見て思った。


「勇者様が帰ってきた……」


そんな正し過ぎる推測を彼らが立てられたのは、ひとえにその剣のお陰だ。


男達の呟きなど知る由もなく。司は、自身の手に驚く程馴染む剣をゴブリンに向けて振るっていた。


「本当に、変な剣だ……」


チラリと剣に目を向け、思い出す。


司は数年前。この剣をウィルバートから譲り受けた。それは、地球で理修にウィルバートを紹介された時だ。


ウィルバートは、兼ねてよりこの剣に相応しい者を探していた。そして、理修が司を紹介する形で、地球で顔を合わせることになったのだ。


「君がそうか……ふむ……」


そう思案しながら司を正面から見たウィルバートは、一度頷くと、アイテムボックスからその剣を取り出した。


「これは、二百年程前に、勇者だと名乗った者が持っていた剣だ。元々は、私の友人がどこぞかの世界で拾って来て捨てた物だったのだがな」


その友人とは、言わずと知れた理修の祖父。リュートリールだ。


この時は既にリュートリールが亡くなって数年が経っていた。


司自身、リュートリールの事を話には聞いていても、その破天荒極まりない行動の数々に、実際に存在した人の話には感じられていなかった。


今回の話もそうだ。


後で理修に詳しくこの話を聞けば、リュートリールは、別の世界で勇者の様な扱いを受けていた。


この剣は、その世界で誰も手に出来ずにいたらしい。理由は、厳重に封印されていた為だ。そして、更に特定の魔力の波動を持った者にしか使えない代物であったという理由もあった。


「じい様が、固定化されていた所有権の情報を弄ったらしくて、今は勇者の資質のある者なら使えるようになってる。勿論、その中でも魔力の波動がぴったり合う人が良いんだけどね」


その波動が最も合う勇者が司だったという訳だ。


「リュートリールも、完全に相性が良いという訳ではなかったのでな。気持ちが悪いと言って何処ぞの谷に捨てたのだが、それを拾ったらしい」


それを勇者と名乗り、魔王であるウィルバートに挑んで来た者が見つけたのだ。勿論、確かに勇者としての資質はあったのだろうが、お世辞にも相応しいとは言えなかった。


「銘も分からないが、好きに呼んで使ってくれ」


ウィルバートは、この剣を分不相応な者が持つ事が気に入らなかった。元々、友人であるリュートリールが持っていた剣という認識であった為でもある。


友人の剣を、粋がった自称勇者がウィルバートに向けて振るう事が不快だったのだ。


そのため、ウィルバートは問答無用で勇者を叩き出し、剣を取り上げた。しかし、魔王であるウィルバートが勇者の剣を持っているのは落ち着かない。ならばと、本当に相応しい使い手を探していたという訳だ。


こうして、奇妙な縁でこの剣が司の手に渡った。


どれだけゴブリンを葬っても、剣は曇らず、斬れ味も衰えない。それが少し気味が悪いが、司は気に入っている。


何よりも、剣が司を使い手と認めている事が実感出来た。


「はっ!」


サクッと思った通りに、敵を斬り倒して行くのだ。手に馴染み、負担にならない重さがある。これが自分の剣なのだと思うと、地球育ちの司には不思議な感覚だった。


「ちっ、まだまだか」


先は長いと、次から次へと湧いてくるゴブリンの群に悪態をつきながらも、司は男達の気配に気付いていた。


ミリアの気配を探っていた時、それに引っかかったのだ。


「くそっ。向こうに行かないように向きを変えるか……」


そうしてしばらく戦っていた司は、魔族達の存在をその男達に気付かせる為、彼らの方へゴブリンが行かないように調整しながら少しずつ向きを変える。


司以外の存在を認識した男達は、ここでの自分達の無力さを理解し、ようやく街へと事態の連絡に走っていくのだった。


◆ ◆ ◆


その頃、ログハウスに取り残された由佳子達、理修の家族は、この後をどうしようかと考えていた。


「外へ出るのは……マズイんだよな……?」

「あんなのが居る世界だぞ。理修が安全だと言ったんだ。待つべきだろう……」


明良と拓海は不安気に、窓から見える魔人や森を眺めていた。


その時、同じように窓の外へと視線を向けていた由佳子が、ログハウスへと近付いてくる人を見つけた。


「誰か来るわ。あら?あの人……どこかで……」


由佳子は、その人物に見覚えがあった。そして、気になって窓へと目を向けた義久も、声を上げる。


「僕も知ってる人だ。確か……お義父さんの葬儀の時に、理修の傍にいた……」


義久は、扉へと向かう。そこでノックの音が響いた。


「失礼。私はザサス・シールス。これはリズリールの持ち物だろうか?」


その言葉で、義久は扉をゆっくりと開けた。


「おや。リズはやはり居ないか」

「あ、はい」


ザサスは、居ないと分かっていても、念の為に目で確認しなくては落ち着かなかったのだ。


それからザサスは改めて義久を見た。


「そうか。君は……リズの父親だったね。本当に喚び出されているとは……これは、国が消し飛ぶのも時間の問題かな」


ザサスは神妙な様子で、魔人を見上げてから、何度か頷いた。


「リズはあっちだね。律界の魔女殿もお出ましか……うむ。ここでも危ないかもねぇ」


全く緊張感のない話し方だが、その内容は無視出来るものではなかった。


「あの。危ないって……」


義久が不安気に訊ねる。それにザサスは笑顔さえ浮かべながら答えた。


「うん。律界の魔女殿は、それこそ、次元に干渉できるぐらいの方だからね。国が吹っ飛ぶどころか、存在そのものを消しかねないんだ。その上、傍にいるのがリズちゃんだからねぇ。不安だなぁ」

「……え〜っと……」


全く不安そうに見えず、聞こえなかった。


「まぁ。なるようになるかな」

「はぁ……」


ザサスは軽やかに笑う。


「とりあえず、中に入れてくれるかい?リズちゃん達の状況を知りたいだろう?」

「あ、はい」


これには、全員が同意してザサスに期待の目を向け、中へと招き入れたのだった。


読んでくださりありがとうございます◎


過去の話を取り入れてみました。

ウィル様と司君が知り合っていたのは、これが理由です。

そして、忘れそうになっていた家族達。

思わぬ方が登場しました。

のんびりしてると、出撃しちゃう人です。



では次回、また来週です。

よろしくお願いします◎

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