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036 『深月家』の家業

2015. 3. 1

理修は、次元を越えた後、すぐに探し人の気配を探った。


(……あの山を越えた辺り……これは地下?)


結果分かったのは、恐らく地下のダンジョンで、現在戦闘中だと言う事だ。面倒なので、出てくるまでその辺を上空散策しようと考えた。


しばらく、気配を読みながらも天気の良い空を浮遊する。そして、そろそろ彼らが地上に出て来ると言う時だった。


(約十キロ先に街……あそこが拠点か? うん?)


目を向けた街に、何かが複数飛来するのが見えた。


(ハーピーの群れ?)


二、三十匹程のハーピーが、次々に街へ突撃していく。それに地下から出て来た彼らも気付いたらしい。慌てて走り出す者達を眼下に納め、メンバーを確認する。


人数は六人。一般的な冒険者パーティだと分かる。その内の二人。一方は、百歳をとうに超えているとは思えない。見た目は七十代の元気な御仁。そしてもう一方が、理修と同い年の幼馴染の少女だ。


杖に乗って、空から追跡する理修。それに、彼女の祖父が気付いたようだ。突然理修を振り仰ぐと、ニヤリと笑って声を張り上げた。


「理修っ。ハーピーを殲滅してくれ」

「え、理修っ?」

「…………」


一瞬、面倒くさいなと思ったが口にはしなかった。だが理修は、それを体現する荒技に出た。


目の前に右手を翳すと、魔法陣が展開される。ハーピー全ての気配を読み取ると、数十と言う光の矢が放たれ、その一匹ずつに突き刺さった。


全てが絶命したのを気配で確認し、ゆっくりと、見上げる彼らの前に降下した。


「終わったよ」

「……相変わらず、凄まじいのな……」

「殲滅しろって言ったのはミヤ爺だよ」

「おう。そうだな。ご苦労さん」


快活に笑うその顔に、いつも誤魔化される。


深月(ミヅキ雅』


マサではなくミヤビと読む。男の、それも爺さんには抵抗のある名前だ。知り合いは皆『ミヤ』と呼ぶ。理修の場合はこれに『爺』が付くのだ。


「ジェス姐の命令で、迎えに来たんだけど、すぐに帰れる?」

「いや、ムリ」

「………」


そうだろうと予想はしていたが、あっさりと答えた事に、若干苛ついた。


「理修ってば、そうは言っても予想してたっしょ?」

「…………」

「理修?い、痛い、痛い!」


生意気な事を言う幼馴染には、思わず手が出てしまった。本当に思わずだ。そのにやけた頬をギリギリと音がしそうな程、摘み上げる。


「……理修、千切れそうだからやめてやってくれんか?」

「あぁ、ごめんね。無意識だった」

「ぅほやよねっ?」

「いや、本当なんか反射的に」

「な、何なん?怖いわ!!」


真っ赤になるのを通り越して一部白くなった頬を押さえながら、怯えた目を向けてくる。


『深月綾愛』


アヤメとは、昔からこんなやり取りが多い。いつも一言多かったり、タイミングが悪かったり、苛つかせるのが得意らしい。


「それで、ミヤ爺。後何日掛かるの?」


そう聞いてはみたが、三日が限度だ。あまり縁のない世界で、魔術師である理修が長居するのは良くないのだ。


「うぅむ……三日、いや、二日待ってくれ」

「まぁ、二日なら……何か問題が?」

「おぉ、最後の一人が動けなくなっててな。それを先ず治さにゃならんのよ」

「ふぅん。それでダンジョンへ?」

「おう。それもあぁして、魔獣が街を襲ってくる間を縫ってな。理修が来てくれたんなら助かる」

「……まぁ、街ぐらい守ってやれるけど……」


それしか理修が出来る事はないだろう。待つしかないのだから。


『深月家』は、武道を生業にしている。だが、ただの武道ではない。あらゆる武道を修め、どんな武道にも対応する。


『奥義継承道』


世界中、幾つも存在する武道の流派。その殆どが『奥義』と呼ばれる極められた技を持つ。しかし、時代や様々な理由で、その継承は困難となる。


特に、継承者となる弟子がいない場合や、弟子はいても、技を継承する力がない場合。奥義はそこで潰えてしまう。


『深月家』の者は、それを代わりに継承し、要望にあった者を探して継承させる。仲介役のような仕事をしているのだ。


雅は引退した後も、こうして異世界を中心に次代である綾愛を連れて仕事をしていた。今回も、修行の一環としてこの世界へとやってきたようだ。


「そんじゃぁ、理修。俺らが籠る間の防衛、頼むな」

「了解……」


こうして理修は、雅と綾愛の奥義継承の間、街を守り続ける事になったのだった。


◆ ◆ ◆


司は、二日後に出掛ける準備をしていた。


(後は適当に……アイテムボックスを使うか……)


明日、父親の命日だ。しかし、学校がある為、明後日墓参りをするつもりだった。


父、要の墓は、山奥にある。街中ではなく人のあまりいない場所ならば、アイテムボックスを使うのに抵抗もないと、都合良く考える。


食べ物や水なども、アイテムボックスなら悪くなる事もない。今日中に用意してしまうつもりだ。


(よし)


全ての荷物がアイテムボックスに納まり、山を少しとは言え登るには、かなり軽装になった。


そして、明後日を待つ。驚きの再会があるとも知らず……。


読んでくださりありがとうございます。


また新たなメンバーです。

今後、この二人とはよく関わっていく予定です。


そして、司くん。

どんな出会いが待ち受けているのか。


では次回、また来週です。

よろしくお願いします。

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