だから、おかわりくれない?
あのさ、聞きたいことがあるんだ。カレーって何色だっけ?
いや、多分予想ついてると思うけど、確かにミントに料理のセンスは無かった。
カレーを作るのにサンオイルを敷いたフライパンを使おうとするし、
カレー粉を5個入れようとするし、甘口派だし、
鍋への投下の順が玉ねぎ、肉、人参、大根、ジャガイモだし、甘口派だし。
しかも、ミントだけなら対処できたが、問題だったのは楓の行動だ。
こいつはこいつでカレーは水を使うんでしょとか言いながら
鍋いっぱいに水を入れやがった。甘口派だし。
挙句の果てに、隠し味とか言いながら冷蔵庫のメロンシロップを投入する。
……2人のカレー作りは別々にやっていたため、ある程度しか把握してないが、
さすがに食えるものではないので廃棄した。
ちなみに出来上がったものは、楓が緑色の気体で、ミントが固体だった。
なんでカレー作ってて固体ができるんだよ!
まあ気体はわかる、いやわからんけど!
しかも楓は何でその気体を集めたの!? 食べれると思ったの!? 緑だし!!
ミントに関して言えば逆に冷えたのか!? お前が使っていたのは本当に火か!?
この家での料理は基本出前稀に俺、椛がいるときは椛が作る。
だから楓は台所に立ったことは皆無だ。
ミントはフライパンに油を敷くぐらいしか知らないらしい。
……それを踏まえても、この結果はあり得ない。
しかもこいつら、俺が処分しようとしたとき「捨てちゃうの? 可愛そうだよ」
とか言うんだぜ。お前らの料理に使われた食材のほうがかわいそうだわ!!
さらに、「じゃあ、お前ら食うか?」って聞いたら目をそらすんだぜ。
何様だよ。
しょうがないから俺が作った。もう二度とこいつらに料理は作らせない。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「……普通のカレーじゃん。甘口なのはいいけど。」
尻尾がピンと立ってる。うまいのか?
「シンプルすぎてつまんないよ、もっと独創性がほしいよね。」
おい楓。そう言うならスプーン動かすのやめろ。
「そうだよ、僕みたいにフライパンで作るとか。」
「メロンシロップ入れればいい隠し味なのに。」
「やっぱり、紅葉にはいろいろ足りないね。」
「兄貴じゃこの程度が限界でしょ。」
……ちょっとイラついてきた。2人のために甘口のカレーを作ってやったのに。
「――へえ、じゃあおかわり無しでいいか?」
「ミント、甘くておいしいね。あ、おかわり。」
「うん、さすが紅葉。だからおかわりくれない?」
この二人に「おかわり無し」という言葉は強いな、覚えておこう。
楓に通じるのはわかっていたが、ミントにも通じるとは。
「あ、紅葉、お茶頂戴。」
「兄貴、おかわり。」
「自分でやれよ!!」
こいつらは俺をパシリか何かと勘違いしてんじゃないか?
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皿洗いは俺がやるしかない。皿を割られるよりはマシだ。
俺の皿洗い中は、二人でテレビを見ながら話していた。
……本当にあの二人仲がいいな。どんな話をしてるんだ?。
「ねえミント、魔法って私にも使える?」
「どうしてそんなことを聞くの?
……ああそうか、こっちの世界で魔法は日常ではないのか。
まあ使えると思うよ。」
え、まじか。
「イメージが大事。僕は斬るイメージを作っていつも発動してる。」
「イメージするだけでいいの?」
簡単……なのか?
「なれればね。次にそのイメージにあった魔力を込める。」
……いや、それどうするんだよ。わかんねえよ。
「で、最終的にそれを現実に引っ張り出すことで使えるよ。」
無理難題すぎる!!
「やってみる。」
やってみんの、楓さん!?
「とりあえず、紙を燃やすとこからやってみようかな。」
燃やすとか簡単に言うなよ。不可能に近くない?
「魔力の色が合えばうまく使えると思う。えーと、ちょっと待って。」
ミントがどこからか本を取り出した。あれ、何だろう?
ペラペラとめくっていきどこかにペンで印をつけたと思ったら、本を閉じた。
ミントが本を閉じた瞬間、その本が紙の束と宝石に変わった。
「この宝石は、持っている人の魔力の色になるの。持ってみて。」
言われるがまま、楓は宝石に触れた。色は燃えるような赤色に変わった。
「強い赤!これならすぐに使えるようになると思うよ。」
「でも、魔力はどうつけるの?」
「頭の中でイメージしたものは骨、魔力を肉と考えればわかる?」
「うん、わかる。よし・・・。」
いや、わかんねえだろ。
10秒経過・・・何も起こらない。
20秒経過・・・何も起こらない。
30秒経過・・・何も起こらない。
1分経過・・・何も(ry
「無理!! できない。」
そりゃそうだ。
「あ、ごめん。魔法の起動式の説明忘れてた。
これやらないと発動するわけないよね。」
「1分無駄にした・・・。」
「とりあえず簡単な、属性魔法入門を注文したよ。すぐ届くから。」
シュン、トスっ。机の上に、一冊の本が落ちてきた。
「ほんとだ。もう来た。」
いや、早すぎだろ。しかも日本語って……
「へえ、炎系といってもやっぱりいろいろとあるんだね。」
「楓の色が、純粋な赤だったから、
属性魔法の起動式を覚えればすぐにつかえるね。
特殊備考というのは、本来の起動式に+αを加える感じ。
僕の場合は同じ魔法で違う斬りかたができるようにしている。」
「とりあえず、今は、いいかな。」
「それが賢明だね。僕の知っている人は、特殊備考を組み込みすぎて全然違う魔法になったから。特殊備考は慣れてないとアレンジどころか別の魔法になる。」
オーダー? マスターオーダー? 意味わからん。
「じゃあ……『イグニス』」
机の上の紙が燃えだした。
まさか楓が本当に魔法を使えるn――机の上?
「ちょ、やばいだろ。早く火を消さなきゃ!!」
「ちゃんと見なよ。イグニスは対象選択できる。机は燃えてない。」
「え?」
机を見ると、先ほどまで紙があった場所は、灰が積もっているだけで
それ以外の変化は特になかった。灰をどかしても机に焦げ目ひとつなかった。
「すごい!! 見た、今の!!」
楓が嬉しそうに言った。
「イメージ通りになった?」
「うん。」
「すごいね。やっぱり楓は才能あるよ。魔力のタイプも僕と似てるし。」
僕は純粋な青色だから。とミントがつぶやいた。 純粋ね・・・。
「そうだ、紅葉、僕たちの会話、また聞いてたでしょ。
じゃないとイグニスの発動に、あんな早く反応するのはおかしいもの。」
「・・・すまん。」
盗み聞きしてしまう癖は直そうかな。
「でも、紅葉に魔法の使い方を教える手間が省けてよかった。
明日、紅葉の魔法見せてね。」
「へ?」
「魔道書の魔法は、その人に合った魔法になるはずだから、色はあってるでしょ。一回も使ってないなら、起動式はのっているはずだよ。」
「いや、そうじゃなくて。」
「僕はもう眠いや。楓、どこで寝ればいい?」
「椛の部屋を使っていいよ。今いないし。」
「ありがとう。じゃあ紅葉、おやすみ。」
と言うと、ミントは楓について行った。
え? 俺、イメージを外に出すとか無理だし、
この魔道書には起動式なんてどこにも書いてなかったよ?