夢
ややR15の紅葉の昔話です。
8歳まで紅葉が壊れていたという昔話です。
シリアスな上、死人が出るので苦手な方は飛ばしてください。
今はいないが、昔、僕たちに優しい両親がいた。
地元でもかなり有名な名家だった。遊んで暮らしていても、10年は何とかなるぐらいだが、父は真面目できちんと仕事をし、母がそれを支えていた。多分、父は母を愛していたし、おそらく母も同じだろう。
でも、母の交通事故後、生活が変わった。
母が灰になって以来、父は人が変わった。
もともと裕福な家だったからまだ良かったが、父は仕事を辞めて、
家で浴びるように酒を飲み、毎日知らない女の人がうちに来ていた。
僕は、理不尽な暴力を毎日受けた。
「なんで死んだのが俺の一番大事なあいつだったんだ」とか
「代わりにお前が死ねばよかったんだ」とかそういう言葉を受けながら。
その頃、僕の心はボロボロだった。僕は、壊れてしまっていたから夢でしか、
この記憶を思い出せない。
ああそうか、これは夢だ。起きたらちゃんと忘れなきゃ。
……続きを話すよ。
ある日、僕にのみに向いていた暴力の矛先が楓へと変わった。
4歳の楓が父に呼ばれた。僕はいかないほうがいいといったが、
父が壊れていることを知らない楓は「大丈夫だよ」といった。
むしろ、何で? とでもいうような目を向けられる。
――止めればいいのに、僕は楓を止めなかった。
父の暴力が怖かったからだ。いかないほうがいいといいつつ、
俺は多分、内心「よかった、これで僕は解放される」と思ったんだろう。
……最低だね、僕。
――そのあと、父が血が付いたバットを持ってきた。
僕は、震える声で「楓は・・・?」と聞いたんだ。
――父はこう答えた。
「新しい女と結婚するから、お前らは壊しておかなきゃいけないだろ。
生きてるかどうか知らないが、お前ら3人明日になりゃあゴミ収集車行きだ。」
何ともひどい理屈だよね? 君は僕だし、そう思うでしょ?
――その言葉を聞いたとき、自分の中の恐怖が別のものに変わった。
この時に、僕は完全に狂ったんだろう。僕の恐怖は、肉親に暴力を振るわれるのが怖かっただけだったのだ。つまり、この時僕は父に対する認識を、知らない人が、関係ない人が楓を殺したと思い込んでしまった。その前までは優しい父親を信じていたんだろう。だが、目の前にいるのは平和を壊して父をどこかにやった知らないおじさんだ。恐怖は怒り、憎しみ、絶望、殺意へと変わった。まあ、今だから言えるが、あの時の俺……僕にはこの気持ちがわからなかった。「とにかく消えろ」そう思った。父を親と思っていた時には絶対に思うことのなかったことだ。
憎しみの炎とでもいうのかな?
そういうものが、僕の中に燃え上がる感じがした。
その瞬間、父が急に発火し焼失した。
何が起きたかわからなかったが、冷静な僕だったら混乱してどうすればいいか、わからなかっただろう。でもね――僕はその時狂っていた。だからこそ、楓が起きる前に父の灰を掃除機で集めて残さず灰を川に流したんだよ。発狂していたおかげで、特に何も思わず作業をすることができた。いや、むしろ――せいで、かな?
……幸いなことに、父に殺されかけたという
楓の記憶はバットによる殴打で消えてたし、椛はまだ2歳だった。
目を覚ました楓に、僕は「お父さんは旅に出たんだ、当分は帰ってこないよ。」
と平気で出まかせを言った。言うことができた。この頃はもう、心に空白しか残っていなかったんだよね。――当時の7歳の僕には。
今の僕――俺には思い出せないだろう。思い出す必要もない記憶だ。
でも、この話は続きがあってさ、8歳の頃の話だよ。
壊れたままの僕を修復してくれた子がいた。……誰だっけ。
あ、そろそろ目覚めるみたい。次の夢で見れるかな?
もう完全に記憶の物置に埋もれた記憶、その中には、僕を直してくれた人との
記憶も混ざっている。まあ、今の俺には思い出せないだろうけど。