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また来たんだ?
――やあ、また来たんだ。
気が付いたら暗闇の中に俺は立ち尽くしていた。
――おはよう、気分はどう?
辺りを見回す。目前に広がるものはただ、闇ばかり。
――私は最高だよ。だって、また会えたんだもの。
ここに来た経緯を考え、うんざりする。
……俺はまた、あいつの世界に来てしまったのか。
パチンっ!!
指を弾く音が聞こえた。その音を認識した瞬間、暗闇が崩れていく。
視界が暗転する。俺はその場に倒れる。
――ねえ、父を殺した話の続きを聞きに来たの? 僕。
少女の声が、俺のことを『僕』と呼ぶ。――お前は俺じゃない。
俺の言葉は、掻き消される。漆黒の世界に。
再び少女の声が聞こえる。それは水面に浮かぶ波紋のように、黒の帳に広がる。
何を聞きに来たの? 少女の声が暗闇に響き渡る。
彼女は、俺の思っていることなど気にも留めない。
ただ、俺が答えるのを待っている。
――俺を直してくれた記憶について聞かせてくれ、桜。
声の問いに答える。瞬間、俺は意識を失った。
2.5章は遅れます。
3章プロローグです。