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僕の飼い主と「青の魔道書」  作者: 暦 司
転校生と転送人の影(2章)
24/30

Qハンバーガーって?

 学校を出て徒歩10分程度で商店街に着いた。

ここから5、6分で楓の言ってたバーガーショップに着く。

バーガーショップといっても放課後、学生たちのたまり場になるような店ではなく

ハンバーガー一つ800円とかするような店だ。

家計を握っている俺としては、

是非行きたくはない店だが、楓が行きたいというなら仕方がない。

 

 ・・・楓がハンバーガーを食べたいというのは珍しいけど。

あの子は食べ放題とか超大盛り牛丼とかの方がいいと思うんだけどな。

まあ、楓の気分がハンバーガーになったというだけだろう。


「ミント、もうすぐ着くよ。」

「・・・うるさい。」


 さっきからずっとこの調子。何でこの子怒ってんのかな。

体育の時間のことで怒ってるのか?いや、でもさっき納得してたし違う気が・・・


「・・・ぶつぶつうるさいんだけど。」

「あ。」

 声が漏れてたか。

「別に体育のことは関係ないよ。ただ・・・」

「ただ?」

「――ちょっと喜んだ自分がバカだったな、ってこと。」

「?」

何だそりゃ?


「ふーんだ、紅葉にはわからないよ。」

「うん、まあ、何で怒ってるかもわからないしな。」

「・・・バーカ。」


 冷たい声で罵倒された。今のバーカは心に刺さる冷たいバーカだった。

ジト―と睨みつけてくるおまけつきで。心がすごく痛い。

この子は言葉も刃みたいだな。俺はMではないので嬉しくは無いが。

むしろ辛い。楓もS、ミントもS。クラスは変人集団と俺に安息はないのか。


 椛に至っては・・・論外だな、あの子は。

優しいけどあの子の場合、痛いのは心じゃなくて体だからな。

ざっくりいかれる。懐かしいな。

 

 ・・・何で楓、こういう風に育ってしまったんだろう?

子が成長期の時にいない親父が全部悪いんだな。よし、そう思おう。

とりあえず親父を恨んでおこう。俺にも原因があると言えばある気がするけど。


「でも今って紅葉と2人きり――」

「ミント?」

「・・・・・フフッ。」

「ミント!?」


 ボーっとしてるかと思ったら急に笑い始めた。

・・・この子の考えてることがわかんない。


「ん、何かな紅葉?」

「ああ、いや、別に・・・」

「呼んだだけってやつ?」

「いや、まあ、・・・そうなるな。」

 呼んだのに特に理由とかはない。

ミントが怒ってる理由を聞こうと思っただけだ。

いまは機嫌がよさそうだけど。


「フフン、別にいいよ。今、気分いいしね。」

「・・・はあ。」

 何で機嫌が直ったんかね?女の子はよくわからない。


「それで、どこ行くんだっけ?」

「ハンバーガー専門店。」

「・・・ハンバーガーって?」

「ハンバーガー知らないのか?」

 意外だな。カレーは知ってたのに。


「魔道書の知識によると、

 日本人はカレーとラーメンと寿司さえあればいいらしいよ?」

「ひどい偏見だな。」

 他にもいろいろとあるだろ。例えばすき焼きとか。

ってかお前、朝ハムエッグ食べてただろ。


「で、それおいしいの?」

「肉が好きなら多分。」

「そうなんだ。」

「肉と野菜とソースをパンに挟んだものがハンバーガーだよ。」

「――へぇ~。」

 目がキラキラしてる。完全に機嫌がなおったみたいでよかった。


「早く行こうよ、紅葉。」

こうしちゃいられない!!とばかりに先を急ごうとするミント。

「ミント、ハンバーガーは逃げないから。」

「別に、早くハンバーガーが食べたいってわけじゃない!!

楓が待ってるからだよ!!」

「はいはい。」

 ――走るミント。それを追う俺。この時、俺は気づかなかった。

楓と同じ、茶髪の少女がこちらを呆然と眺めていたことに。


「お兄様・・・?」

 少女はつぶやいた。髪型こそは違うが、その容姿は楓とほとんど同じ少女が、

その右手に、1本の包丁を握りしめて。



 

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