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僕の飼い主と「青の魔道書」  作者: 暦 司
転校生と転送人の影(2章)
22/30

バスケやろうぜ

 体育館のステージに、いつの間にか実況用の机と椅子がセットしてあった。

そこに、2人の女子生徒が座っていた。一人は黒髪の少女、もう一人は小学生のような青髪の少女。

 

突如、黒髪の少女の方がマイクを握りしめ叫んだ。


「さあ始まりました。チームメガネVS天魔王ARAI軍!!

司会は俺っ娘ことみんなのアイドル、掛値ちゃんとぉぉぉぉぉ!!」

そこまで言うと、黒髪少女は青髪少女にマイクを手渡した。

青髪少女が台本とマイクを交互に見ながら言った。

 青髪少女ことミントが机に、実況の掴み用と書かれた台本をたたきつけた。

誰が書いたかはわかる。掛値さんだ。あの子昔から用意周到だからな。

・・・ミントにロリは禁句だろう。


「俺的にはロリかわいいで間違いないと思うよ~。」

「ロリじゃない!!僕は高校s――」

「さて、両チームのメンバー紹介といきましょう。」

「無視!?」

 ギャーギャー喚くミント。お前ら、いつ仲良くなったの?

俺の疑問をよそに、マイクを取り出した掛値さんはメンバー紹介を始めた。

「まずはARAI軍の紹介です!!

最初は当然・・・主将ARAIだぁぁぁぁぁぁぁ。」


 そして前に出た新井君。コートの真ん中に立ったかと思うと急に

「さあ来い、下等なメガネとその仲間たちよ!!」

と、言ってきた。上から目線で。


 普段のTHEスポーツマンといったさわやかな感じは何処へやら、

魔王的なオーラをまとった新井君が腕組みをしながら

高笑いを浮かべながらの言葉だった。

そのキャラ何?マジで何?魔王気取りですか!?

 

 次に掛値さんは次々と向こうチームの人たちを読んでいった。

「そして右から山田、中田、三田、和田!!」

向こうのチーム、田が続いてる。偶然かな~。

「我らしてn――」

「続いてチームメガネの紹介にうつりまぁぁぁす!!」

 向こうのチームの人たちにコメントさせてあげて!!

 バッサリカット。授業の残り時間的にも十分時間はあったのに・・・

何か大いなる力が彼らの発言を必要ないとか思ったのだろうか?

誰も彼らがカットされたのを気にしてないし。

カットされて当然とばかりの反応だ。

 

俺もあまり気にしてはいけないのか?


「まずは主将、メガネこと委員長だぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「貴様に受けたこの傷、今こそ借りを返させてもらう!」

メガネ割れたのお前のせいじゃん。


「つづいてぇ、勉強もできます、運動もできます。

我らが新聞部部長、三矢葵だぁぁぁぁぁ!!」

 そういえば、掛値さんって新聞部副部長だったっけ。

葵と同じ部活なんだよな。部長と副部長だっけ。

・・・それにしても、二人が話しているところ見たことないな。


「俺は負けない!!待ってろ俺のキャンパスライフゥゥゥゥ!!」

 葵、今のお前の敵は受験じゃない。相手のチームだ。OK?


「そしてぇぇぇぇ・・・」

 多分次は俺かな?掛値さん、ハイテンションに呼んでくるだろうなぁ。

いつもののんびりマイペースな彼女はどこ行った。


 ・・・周りにの雰囲気的に俺もボケた方がいいのかなぁ?


「・・・・・・・・」

が、予想に反して俺の名前が呼ばれない。

え、何?大いなる力が俺にも働いて俺の発言必要ないとか?

「・・・どうしたの?」

ミントが聞く。すると――

すっ

ミントの方にマイクを差し出した掛値さん。何がしたいんだ。

「ん?」

ミントも急にマイクを差し出されてキョトンとしている。

「はい。」

「え?」

「こーよー君の紹介はミントちゃんがやりたいよねぇ?」

「何で?」

「だって、こーよー君の彼女じゃないの?」

「・・・・え!?」

 

 は?何言ってんのこの子?クラスメイト全員いる中で。

迷惑だろ、ミントに対して。俺なんかじゃ、釣り合ってねえよ。


 ・・・自分で言ってて悲しくなってくるな。


「はぁぁぁぁぁ!?べ、べ、別にそ、そんななな、そんなんじゃないし。

まあ、た、確かに嫌いじゃないよ?

で、でも別に異性として好きとかそういうのじゃないし!!

僕にとっては紅葉なんてあの・・・あれ!!友達!!同性の友達的な人!!」


 ・・・男性であることを否定された。うん、わかってたけどな。

顔を真っ赤にするぐらい怒ってたな。それほどそう思われるのが嫌だったのか。


 あれ、何でだろう?胸が痛いなぁ、目から水もあふれてきたよ。


 

 だがクラスメイトは、キャーとかリア充死ねとか

さすが英雄とか意味不明の反応をしていた。

真っ向から異性であることを否定されたというのにリア充とかないわ――

・・・ないわ。


「・・・フーン。」

「何その反応!」

「べっつにぃ。

じゃあ、コーヨー君の紹介はスキップで。ミントが恥ずかしいみたいだし」


 よっしゃあ!!ktkr。ボケなしでOKフラグたったで!!

ミントはおそらく、やらないというだろう。

時間的にももう始めないといけないしスキップしてくれた方がいい。


がミントの反応は予想外だった。

「べ、別に恥ずかしくないし!!

・・・いいよ、やるよ。やればいいんでしょ!!」

やけくそ気味にミントは言った。そこは勝負するとこじゃないよ!?


 ・・・ってか、やるの!?

特にボケが思いつかないんですけど!!


「それじゃあミント、どうぞ!!」

「え、ええっと・・・」

 ・・・やっぱり変な意地張ってやるとか言っただけか。

このままスキップにならないかなぁ~。


「ミントにとってのこーよー君を紹介すればいいと思うよ?」

 掛値さんが言った。確かにそうだけどね。


ミントにとっての俺だろ・・・。俺ミントと会ったばっかりだぜ?


「僕に・・・とっての――」

「・・・難しい?」

「・・・一応、イメージはあるけど、急には思いつかないよ。」

 そのイメージがプラス方向だという予感がまったくしない。

・・・今思えば印象最悪じゃね俺?初対面で小学生とか言っちゃったし。


「じゃあ、俺が台本書いてあげたら――紹介やってみる?」

「・・・うん。」

 掛値さんが紙とペンを取り出した。

おそらく紹介文をわざわざ書いているんだろう。今アドリブで。

 

 ・・・掛値さん、できればボケやすく!!

多分雰囲気的に俺ボケなきゃいけないから!!

 そんな思いも伝わったのか

掛値さんがこちら手を向けてグッジョブの形をとってきた。

俺の願いが伝わった・・・のか!?

 

 そして書き終わったらしい・・・って早!!

台詞つくんのはええ。さすが、新聞部副部長。

「はい、読んでみて。」

「えっと、やさ・・・」

やさ?

そこまで言った後、ミントの顔が真っ赤になった。

「・・・ちょ、掛値!!これを言うの!?」

 何書いたのあの子!!

「台本書けって言ったのはミントだよ?ほら、こーよー君待ってる。」

「む、掛値から言ったのに・・・」

「つべこべ言わない!!さあ!!」

「ううー、わかったよ・・・。」

一瞬ためらった後、か細い声で彼女は言った一言は、ボケるどころではない爆弾だった。


「や、優しくて・・・頼りになって・・・僕を助けてくれた・・・

 ちょっとだけかっこいい、紅葉・・・」

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・!!」」」」

頬を染めながら、彼女はとんでもない一言を言った。

 

 ちょ、何この破壊力!?美少女の頬を染めながらの一言はやばい。

かっこいいとか超嬉しい!!

 ・・・数秒後、さっき異性としては見られていないということを

思い出して悲しくなったが。

ていうかあれ台本じゃん。ミントそんなこと思ってないじゃん。

台本の台詞で恥ずかしがってるだけじゃん。

俺関係ないじゃん。


 ん?あの台詞じゃ、なんか告白みたいな・・・


「詩野さん!!優香ちゃんを保健室に連れてくから!!」

とクラスの女子、青木さんは言い

「言わせたのは俺だけど、まさかここまでとは思わなかったぜ♪」

と解説席にいた掛値さんがてへっ的なポーズをとり

「血が・・・鼻血が止まらん・・・」

「幸也、死ぬな、死ぬなぁぁぁぁぁ!!」

死人が出たり、

「あの女神、まじ天使・・・」

「これは・・・あれだな・・・」

「ミントちゃんファンクラブ・・・作るか・・・」

「ちゃんじゃねえ、『たん』だ!!」

「ミントたんファンクラブか・・・

フラグの英雄、辻さんに許可を取らなきゃな。」

ファンクラブまで出来ようとしていた。


・・・何この破壊力。というかうちのクラスどうした。

これがミントの可愛さの余波とでもいうのか。

 ってか俺、フラグの英雄だったんだ・・・。

いつ誰とフラグが立っているのかは知らないけど。


「さあ、こーよー君!!コメントをどうぞ!!」

うえええ。ここでコメントですか。ボケはいれるべきなのか!?


「ボケはいらないでぇぇぇぇぇぇぇぇす!!」

「お前、何で俺の考えてることがわかるんだよ!!」

この子はついに超能力にでも目覚めたのか!?


「早く、早く!!ミントちゃんの告白に対してどう思いました!?」

「お前、横のミントが真っ赤になってんぞ!!やめてやれ!!」

 当事者のミントはいっそ殺してとかつぶやき始めたし!!

その子が怒りで不知火打とうとか言い出したらどうすんだよ!!


――全滅するわ!!俺含めて!!


掛値さんの台本のせいで学校がヤバい――笑いごとにならねぇぞ。


「英雄・・・いや、あえて紅葉と言わせてもらう!!

ミントちゃんの勇気を振り絞った告白なんだぞ!!

ちゃんと答えなきゃ男じゃねえ!!」

 

 委員長(メガネ)が余計なことを言う。

これが本当の告白ならぐずぐずしてる俺の方が悪いと思うが、

――というか本当の告白とかだったらすぐはいというだろうが

今はミントの神経を逆なでする余計なひと言でしかない。


 あれ台本に書いてあっただけだから!!あの子の本心じゃないから!!

机にうつぶせになってたミントがびくってなったじゃねえか!!


 ミントの方から不吉な言葉が聞こえる。

みんなの前で告白・・・とか、全部斬れば今日のことはとかなんとか。


 ・・・なんかあの子から黒いオーラ的なものが見えるよ。


 そしてクラスからの早くコール。

やめろ!!このままじゃミントが・・・。


 どうにか、どうにかこの場を冷ます方法はないのか!!


 昔の人は、困ったときは周りを見ろとか言っていた――気がする!!

解決方法が見つかるかも知れない。というわけで、今の状況を整理しよう。


 ミントが、掛値さんの書いた告白的な台本を読む。

       ↓

 掛値さんの悪乗り、クラス大興奮、そのせいでミントの精神状態がヤバい。

       ↓

 クラスの混乱により、今起きたことは告白という判断になっている。

そのせいで、ミントが病んできた。←ここ重要


 ・・・掛値さんこの野郎!!まじFu〇k!!

90%あの子のせいじゃねえか!(10%メガネ)


 とりあえず、今するべきことはミントの精神状態の回復と、

クラスの鎮静化か。・・・どうしよう。


「あ~、えっと――」

「オオッッッッッと!!ついに返事かぁ!?」

マジお前後で殺す。お前、この状況を面白がってんな!!


「いや――今のは告白じゃなくね?」

 革新をついたと思われる俺の一言。

一瞬、体育館内が静かになる。おっ、成功したか・・・


「ふざけんなチキン!!」

「意気地なし!!」

「ロリコン!!」

「・・・紅葉のヘタレ。」

「超クズ野郎!!」

「女の敵!!」

「女誑しのクズ野郎!!」

「こーよー君、そりゃないぜ。このヘタレ!!」


ひどい言葉の暴力を受けた。なんて理不尽な世界だ。

あと、掛値さんマジ調子に乗んな。

この罵声の雨に葵の言葉まで混ざってないのが幸いだな。


 ・・・ん?葵は何してん?


 体育館内を見渡したら葵が、2階の窓から空を見ていることに気づいた。

あの野郎、安全な所に避難してやがる。こっちに気付いてくれ。


 ふと、葵がこっちを見た。


 助けて!!このままじゃミントさんが不知火撃っちゃう!!

葵の方を祈るように見た。葵なら、何とかこの混乱を抑えてくれるはずだ。

 

 俺の願いが通じたのか、葵がマイクを持ってステージに立った。

何だ、何をする気だ?

俺の疑問をよそに、葵はマイクの電源を入れた。

瞬間、彼にスポットライトがあてられる。

 全員が彼の方に注目する、彼はマイクのスイッチを入れた。 

 

 彼の言った言葉はたった一言だった。

だがそれだけで、この場のみんなが本来やるべきことを思い出した。

その一言とは・・・


「――バスケやろうぜ!!」

 

・・・あ、そういえば俺たち、バスケやるんだった。

 

 ・・・なお、試合の結果は32対4で俺のチームの勝ちだった。

葵何であそこからシュート撃ってはいるんだよ。全部3ポイントかよ。


 

 

次回の投稿は、おそらくテストあけぐらいになると思います。

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