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僕の飼い主と「青の魔道書」  作者: 暦 司
転校生と転送人の影(2章)
21/30

強制参加ですか、そうですか

3時間目、体育の自習。自習という名の自由時間。

自習監督の田中先生( ニートやろう)がスキルニートを発動させたので、

体育館内は混沌の渦とかした。


 委員長の眼鏡は空を舞い、掛値さんのドロップキックが炸裂し、

ミントの人間の限界を超えたスイングによるスマッシュが体育館の床を貫いた。

    

・・・カオス過ぎだろふざけんな。ミントにいたっては順応早過ぎだし。

   

「くらえ田中、新必殺音速ドリブル!!」

「さあ来いメガネ、俺は実はバスケしたことがないぞ!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ。」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「田中が抜かれたようだな。」

「ククク、奴は四天王の中でも最弱。」 

「メガネのドリブルごときに抜かれるとは四天王の面汚しよ。」

   

「止まって見えるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」

・・・どっかで見たことある展開だな~。 

   

「はあ、はあ、やった。やったぞ。四天王を抜いたぞぉぉぉぉぉぉ!!」

「あ、ボールもらいますね。」

そしてお前はこの茶番スルーしてまじめにやるんかい。   

バスケ部の新井君か。俺は面識ないけど、女子にモテるらしい。・・・うらやましい。

   

「やるかボケェェェェェ!!」

「え、ちょ、直接攻撃はファールだろ!!」

「問答無用!!バスケは弱肉強食が常!!」

ルール変わってくるなそれ。 

ってあ・・・メガネが・・・


 パリーン!!と言うレンズの音が体育館内に響く。

その瞬間、全員の時間が止まっているかのように静かになった。



その静寂を最初に打ち破ったのは・・・

「「「「い・・いいんちょぉぉぉぉう!!」」」」

 委員長のチームメイトの叫び声だった・・・。   

ってそれ委員長じゃねぇぇぇぇぇぇ!!


「ふ、僕は大丈夫だ。だが・・・今ので螺子が取れてしまった。」

「そ・・そんな!い、今すぐ保健室に行けば・・・」

保健室にドライバーはないよ?


「いや、もう手遅れだ。れんz・・・右目がやられた。」

いや、レンズって言えよ。


「俺の屍を・・・こえて・・・いけ・・・。」

「委員長・・・」

「くそ、テメーらゆるさねえ。メg・・・委員長の敵をとってやる!!」

いや、生きてるからね?死んだみたいに言ってるけど、眼鏡割れただけだよね?


「だ、だが・・・相手チームにはまだバスケ部のA☆RA☆Iが・・・」

ねえ、なんで一々『あ、ら、い』って言うの?普通に新井って言えよ。

 そもそも事の発端は委員長のルール無視によるダイレクトアタックからの自滅だよ?

新井君悪者みたいだけど全然悪くないよ?


「しかも、こっちは一人少ない。どうすれば・・・。」

他の男子のグループはハンドボール中、当然バスケをする奴などいない。

・・・にしても、うちの体育館広いな~。  

   

「お・・・お前ら・・・。」

「「「「委員長!!」」」」

さっき屍とか言ってたのに復活早いな。   

「まだ・・・まだ諦めるのは早い・・・グフッ」

「もう喋るな!!傷口が開いちまう。」

いや、壊れてるのレンズだよね? 

   

「俺らには、俺らにはまだあいつがいるだろう」

「ま、まさか!?」   

「そう、そのまさかだ。まだうちのクラスの英雄『辻さん』が残ってる!!」


・・・えー。


「そうだ!あの人なら何とかしてくれる!!」

俺バスケしたくないんですけど。


「辻!!」

ちょっと呼ばないで!!やりたくない!!

「俺の後は、頼んだぞ!!」

いや、まだやるとは・・・


「紅葉、バスケするの?」

ミント!?さっきまでバレーボールやってたはずじゃ・・・


「じゃあ、僕は観戦させてもらおうかな?」

余計なこと言うな、これじゃあやるしかない流れに・・・


「あ、こーよー君バスケするんだ。」


 黒髪ポニーテールで女子とプロレスごっこ中の掛値さん!!なんで来たんすか?

あと何でプロレスごっこしてたんすか。見てたけど、いいドロップキックでした。


「俺もこーよー君を応援してやってもいいよ~。」

結構です。だって俺やらないし。


その瞬間、体育館のドアが勢いよく開いた。そこに居たのは・・・

「待たせたな、紅葉!!」

早退したはずの葵だった。体操着はところどころ焦げている。


・・・お前はどこに行ってたんだ!何で服が焦げてんだよ!!


「いつもお前は遅いんだよ!」

 掛値さんそれ本来、俺が言うべき台詞じゃ・・・。

まあ、絶対言わないけど。


「役者は揃った!!今こそA☆RA☆Iを倒そう!!」

 いつのまにか委員長が、スペアのメガネをつけていた。

・・・スペアあるじゃん。死んでないじゃん。俺出なくていいじゃん。


新井君もこの茶番に、あきれているんじゃ・・・


「くっくっくっ、この天魔王ARAIを倒そうとは・・・なかなか面白い下等種族だな。」

おいまて、何でこの茶番にお前まで乗ってるんだよ!!


 ふと周りを見れば、クラスメイトは皆、この試合を見ようと集まっていた。

・・・逃げらんねえ。


「・・・いいよ、やろう。」

強制参加ですか、そうですか。

・・・仕方ないな。久しぶりにスポーツをするのも悪くない。


どうせやるなら楽しまなきゃ損だ。見てな、ミント!!

そうして俺は、バスケのコートへと足を踏み入れた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 生徒立ち入り禁止の屋上から、銀髪の少女が体育館内を見ていた。

この学校の体育館は、窓から中の様子が見られる。

そして、屋上からなら中の様子をほとんど把握できる。


 彼女の服装から、この学校の生徒だと一目でわかるだろう。服装だけ見れば。

 

 目は無機質な銀色の瞳、雪のように白い肌。

その頬の半分ぐらいまであるピンク色のライン。

右耳についているヘッドホンの耳に当てる部位に似た機械。

ひざから下の、この世界のどの物質にも当てはまらない金属でできた足。

背中に羽のように浮いている金色の機械。


 その中でも、何よりも異質とらえるのは左手の甲に書いてある文字。

それはこの世界のどの言語にも一致しない文字。


 それが表わす意味は

『被験体番号075 純白の天使』


 ・・・ふと機械の天使は、耳の機械に触れる。

通信が入ったのだ。内容は・・・


「彼の、命令・・・。」

そっとつぶやく。表情からは、彼女が何を考えているかはわからない。


・・・私が指令を実行したら、標的の周りの人は悲しむだろうか?それでも、私は・・・


「私は、私に与えられた役目を果たすだけ。」

そう、彼のために。私を機械から人間にしてくれた、彼のために。


 ・・・今回は標的の顔を確認できただけ良しとしよう。

今乱入して、どさくさにまぎれて逃げられたら厄介だ。


「なら・・・明日かな。」

 明日、一人になったところを狙う。それなら確実だ。

今私がやるべきは、痕跡を残さず去ること。彼に迷惑をかけないように。


「・・・ライトニング。」

 彼女がつぶやいた瞬間、彼女の姿が屋上から消えた。

見る人には高速移動の魔法だとわかるが、速さは音速を完全に超えている。


 

 機械の天使が去った。後には、何も残らない。

次話の投稿は10月の始め辺りになると思います。

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