思いっきりフルスイングされた
~2時間目終了後の休み時間
いや~まさかこんな簡単に解決するなんて思わなかったな。
まさか名前があれば個人の特定できるなんて……。
「いや、マジで万能過ぎない?」
「――名前での特定は『使者』の魔法だし、そりゃチートでしょ。」
遠距離から敵を切ることができる魔法を使える人にチートと言わせますか……
それにしても、また使者という言葉が使われたな。
「『使者』っていうと……
不知火ブッパっていうハチャメチャな作戦を出したお前の母か?」
『ママはイシュの使者なんだ』
「――ううん、別の人。記憶の人。」
「……記憶の人とか言われてもわかんないな。」
「赤の国の使者だよ。
僕の小さいころはよく遊んでくれたな~。」
赤の国? ミントの世界では、この世界と同じでいろんな国があるってことか。
「なんて人?」
「え、その人の名前? えーと、……何だっけ?」
「って忘れたのかい!!」
遊んでくれた人なのに!!
「仕方ないよ。だって僕が8歳の頃の話だもん。
逆に聞くけど、紅葉ってその頃のこと詳しく覚えてる?」
「……まあ、そうだろうな。」
実際俺も、その頃のことはあまり覚えてないしなぁ。
「じゃあ、話変えるか。あのさ……」
「何?」
「……情報収集って何すりゃいいの?」
実際、何を調べればいいかもわからないし。
転送者の正体は軍とかいうのが調べるらしいから、
俺らは何を調べればいいんだ……?
と、当然の疑問を聞いてみたが、ミントは
「? いや、特に何も。あまり目立たないように過ごせばいいと思うよ。」
と、情報収集という言葉の意味を無視して
何もしなくていいという答えを持ってきました。
「え、でも情報収拾ってのが指令ってやつなんだろ?」
と聞いたら、ミントは説明するのも億劫だとばかりに
「下手な動きをして、転送者に警戒されるよりは、
できる限り目立たないようにして、転送者を特定してから動いた方が確実でしょ。
それに、もう敵の正体までわかるっていうのにこれ以上何を調べるの?」
確かに……。
「それに、敵の目的とかなら、捕まえてから聞けばいいじゃん。」
そう言ったミントは強気の表情を浮かべた。そして、尻尾は山形立っている。
猫に当てはめると……自信満々といったところかな?
……そういえば、尻尾や猫耳がばれないのも魔法だったな。すごい。
「というわけで、さっき、この世界の学校の常識を
メールでアルに教えてもらったよ。
次の授業からうまく適応してみせるよ。」
あの携帯のようなやつでメールできんのか。
「あ、そう。頑張れ。じゃ早く着替えろよ。」
「もちろん。ブルマってやつを履くんでしょ?」
さっそく適応失敗してるんですけど。
「違う、このズボンだ。」
……別に俺が女子のズボンを持ってたわけじゃなくて、男女共通の仕様だ。
「あれ? でもアルはこれがこの世界の体育という
授業に着用しなきゃいけない聖衣だって・・・」
「いや、あのな……。」
そのブルマというのは前時代の物なんだよ?
まあ、俺は嫌いじゃないけど。むしろ好物だけど。
できればミントに穿いてほしいけど。
「そして体育の実力が最も高い人たちは金のブルマを穿いていて
黄金聖闘士とか呼ばれてるって・・・」
「捨てちまえそんな知識!!」
そのアルとかいうやつ、この世界に来てまで何やってんだよ!!
絶対漫画の知識じゃねえか、それ!! 色々混ざってるし!!
この世界の常識について変な偏見持ってるぞ、その子。
その子の契約者、ちゃんと教えてあげて!!
「あ……紅葉、どうしよう。」
「ん?」
まさか――
「僕、この学校の体操着ないんだけど……」
「制服はあるのに?」
「――全部ママが用意してくれたから。」
この学校の制服はあるのに、体操着は無いんかい。
ミントの母、詰め甘すぎ。
――突如、俺はある可能性について思いついた
……いや、まさかな。
「あのさ……」
「そ、それ以上言わないで!!」
この反応、やはり……
「もしかして体操着に、ミントの身「うわぁぁぁぁ!!」ちょう・・・」
ドカッ、バキッ、ガンッ。3コンボ、蹴り、蹴り、剣の鞘による殴打。
紅葉は、その場に倒れた。最後に限っては思いっきりフルスイングされた。
なるほど、彼女の身長に合う体操着がなかったわけか。
でもそれ俺悪くないよね!? 俺が殴られるのおかしいよね!?
「……あの?」
「正座。」
「はいっ!!」
何かデジャウ。
「……何か言うことは?」
「めっちゃ痛かった。」
「……他には?」
ミントの眉がピクッと動いた。怒ってる。これ以上のボケは駄目だな。
「……俺が悪かったです。ごめんなさい
もう二度とその話題には触れません。」
「よろしい。立っていいよ。」
「失礼します。」
今回は自分が蒔いた種とはいえ使い魔って、普段はみんなこうなのか?
まあ、今はそれは置いといて……
「――でも、体操着がないとすると、どうする?」
結局、問題は解決してない。体育着がないという事実は変わらない。
「うっ。」
痛いところを突かれたように、ミントは声を上げた。
まあ、手は無いこともないけど、さっき蹴られたし、どうしようかな?
「ううー、紅葉、どうしよう?」
……………。
「俺のジャージでよろしければ貸そうか?」
「……うん、お願い。」
――上目使いは卑怯だよなぁ。