ちょっと痛かったね
SHR終了後、無理矢理ミントを外に連れ出した。
……教室の方から、何か聞こえてきたが気のせいだろう。
具体的には、「さすが英雄、ロリ体系に目がない」とか
「もしかして、あのLINEの子じゃない?」とか
「紅葉、用事思い出したから俺、今日学校サボるよ」とか
そんな幻聴が聞こえた気がしないでもないが、今はどうでもいい。
何でこいつがここにいるんだ!?
とりあえず、どこか適当な教室に入って状況の整理をしよう。
……一時間目はサボる。決めた。
幸い、次の授業は国語の授業、つまり担任の授業だ。
あの人、適当だから2人いなくても
気にしないで減点で済ませるだろう。
それより、こいつが学校に来ることになった
理由を解明しなくてはいけない。
猫耳の少女が学校にいるとか、一瞬で注目されるわ!!
「――紅葉。」
「何!?」
振り向く俺。ミントと目が合う。押して彼女は言った。
「おこだね」
渾身のドヤ顔で一言。
もちろん俺はこう返す。
「どこで覚えたんだそんな言葉!!」
魔道書から書き込まれるという情報だとしたら、
完全に無駄すぎるだろ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
結局、空いていそうな教室はなかったんで
図書室を利用することにした。
いつも空いてるし。
管理が雑とか言ってはいけない!!
まあ、他に選択肢はないしありがたく使わせてもらおう。
「ねえ、紅葉。」
「なんだよ!!」
またおこなのとか言われても、
どう反応すればいいかわからないよ。
「その、僕の手、握ってる・・・」
「!!? わ、わるい。」
「――ま、まあ別にいいけど、ちょっと痛かったね。」
ミントが、俺の手を強く振り払った。
そんなに強く握っていたのか。
「――で、僕を無理矢理ここに連れてきた
わけだけど、どうしたの?」
「何でお前がここにいるのか、分からないからだ。」
そう聞いたら、ミントは
「なんだそんなことか」という目をこっちに向けてきた。
「そりゃ、指令でたからに決まってるじゃん。」
「へえ、だから来たんだ。なるほどなるほど――って納得できるか!!」
学校に通うには、多くの手続きとか必要じゃないのか?
1日でできるのはおかしいだろ。
「指令は絶対だよ?そんな当たり前のことを聞くために、連れて来たの?」
ミントが目に見えて不機嫌になる。
「そこじゃない、手続きとかはどうしたんだ。」
「ママはそんなことも、全部織り込み済みで指令を出すから問題ない。」
――ママ?
「――お前の母が、指令を出してた人なのか?」
「そうだよ。イシュ唯一の使者なんだ!!」
「イシュって? それに使者?」
「イシュっていうのは青の国、つまりは僕の国のこと。使者は――」
使者は?
「……まあ、いいや。」
よくは無いけど。
「指令についてもう少し詳しく言うとね、転送者はこの学校にいる生徒らしい。
だから調査しやすいように、この学校の生徒になったんだ。」
敵、近くね?
「……だけど、猫耳尻尾ある少女とかバレバレだろ。」
何せ、敵は向こうの世界の人間だろ。
猫耳付いた人間なんてこの世界にはいないはずだし。すぐに気付かれるだろう。
「そこは問題無い。昨日、ママが認識魔法で細工してくれたから。
相手が使者じゃなければ、ばれることはないと思う。
さっき、僕が教室に入ったとき静かになったから、
魔法に不備があると思って焦ったけど。」
だからさっき、猫耳の話題がなかったのか。
「なるほどね、でも俺に見えるのはおかしくないか?」
「多分、契約者だからじゃん?」
そういうもんか。
「じゃあ、もう戻ろう?」
「ちょっとタイム、もう一つ聞いていい?」
「早くしてね。」
「日曜日に俺なんかしたか?」
せっかくだし、今のうちに聞いておこう。
「――な……なな……な、何が?」
「いや、ほとんど日曜の記憶なくてな。」
もし、謝らなきゃいけないことがあるのなら今のうちに聞いておこう。
「そ、そう。じゃあ僕のあれも――」
ミントがよくわかんないことを言ってる。
「ああ、膝枕してくれていたのは覚えてる。」
そのあと楓と口論になったまでは覚えてる。
理由は覚えてないが。
「だから、教えてほしいんだ、日曜に――ん?どうした?」
ミントが震えてる。顔も少し赤いし
――急に風邪でもひいたか?
「す」
「す?」
「――全て忘れろぉぉぉぉ!!」
ミントが、国語辞典を振り下ろした
後ろに身を引く俺。あぶねえ!!
「図書館の辞書は武器に使うものではありません!!」
「うっさい、僕は日曜日に膝枕なんてしてない。消してやる」
うわ、聞いちゃくれねえ。というか、それは記憶のこと? それとも俺?
そのあと、俺の命がけの説得により落ち着いたミントは、
あのあと俺は、朝まで寝ていたことを教えてくれた。
何だ、何もなかったのか。
じゃあ、朝の二人の態度は何だったんだ?