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僕の飼い主と「青の魔道書」  作者: 暦 司
青の魔道書に選ばれし者(1章)
14/30

1.5章 楽しみだなぁ

 黒の国と呼ばれている『ハディスレシア』。その首都『レシア』の城の中。

 外の光が全く入らない、窓がない地下の部屋に、一人の青年がいた。

そこは、一つのランプが、部屋の隅々までを明るくしていた。

 

ランプの火程度ではこの部屋全てを明るくするのは到底不可能だろう、

がこの部屋にいる青年はそれを、さも当然であるかのようにまったく気にしない。

 

 その部屋の一面には、黒色に光る鎧のような破片がいくつも散らばっていた。

今や、この世界にいる人間ならだれでも知っているであろう黒の国の主戦力

影の騎士シャドーの残骸だ。


 この部屋には、戦いで壊れた影の騎士シャドーの回収室だった。

本来、ここは人がいないときに残骸を魔力へと還元して

無に戻す作業を行う部屋でもある。


本来は、人が入っていると、その機能が人間にまで及ぶために

分解作業を自動で一時停止してしまう。

だからその部屋に人が入るのは一部の人間しか許されていない。


 こういう理由ががあったため、この部屋に入る人など

1人2人ぐらいのものなのだ。


 しかしその青年、黒髪の男は毎日この部屋に来ている。

そして、影の騎士シャドーの残骸を1体1体じっくりと見て、部屋に戻る。


 残骸からわかることなど、彼以外には無いに等しい。

なにせ、それを作った人間の魔力がないと情報を読み取ることはできないからだ。


 つまり、この黒髪の青年は影の騎士シャドーの作成者となる。


 いつもは、1人でここにきて一通り目を通して帰っていく。

だが、今日はいつもと違った。彼は1体の影の騎士シャドー

残骸を持っていった。

 それは、大剣を武器とした影の騎士シャドー、異世界侵略の際、

日本という地域にいる使い魔をあぶりだそうと、地に放ったうちの1体だった。


 彼の設定ではこの個体は、その使い魔の不知火にギリギリ耐えられるように

魔道障壁を設定したはずだった。

 耐えられない攻撃は魔力を無力化するこの大剣で防ぐように

インプットしておいたはずだ。少しずつ早くなっていくのも、

攻撃後のフリーズも、敵の魔法の威力の実験のためにあえて入れておいた。


 だが、あそこまで早くなったこいつには、インプットされた情報のうち、

フリーズを削除するようにプログラミングしたのだ。


 だが結果は、攻撃後のフリーズでとどめを刺された。


 それぐらいなら、彼はここまで執着しなかっただろう。

自分の設定にミスがあっただけの話だ。

 

 しかも、斬撃の神童相手では長引けば長引くほど、

攻撃頻度は上がるとはいえ火力差で負ける。

が、ここでも、彼には予想外の結果となった。


 ――この個体を倒した者は使い魔ではなく契約者の方だったということだ。


 数百の戦いを生き抜き、魔道書の魔法もS級のグングニルを扱える雷帝の契約者パートナー

ならば話はかわるが、いくら魔力は高いとはいえ、

昨日契約者パートナーとなったばかりの人間には

こいつは手に余る個体のはずだ。


 ――だが、彼は勝って見せた。

その魔力で扱うはずの――魔道書の魔法も使わずに。


 ……彼がその男とコンタクトを取ったのは、単純に興味が湧いたからだ。

敵には、彼の存在は知られていたが、自分から敵となる人物に

話しかけたのは初めてのことだった。


 彼は、その残骸を絶対に人には教えないだろう。言えば回収されるのがオチだ。

だから、彼は誰にも言わない。将軍にも王にも。

本当に魔法が使われた形跡はないのか、残骸から読み取るために、

彼は早足で自分の部屋に戻ろうとする。


「……楽しみだなぁ、どんな結果になるんだろう?」


 彼は早足で歩きながら、鼻歌交じりにつぶやいた。

 

 ……この時すでに、彼はある程度の結果の予測はついていた。


 紅葉、彼が無意識に魔法を使っているという結果。

その魔法は、どの世界にも存在しない彼だけの魔法だということ。


 ――そして、彼の存在がこの戦争の結果を、大きく左右することを。





 

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