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僕の飼い主と「青の魔道書」  作者: 暦 司
青の魔道書に選ばれし者(1章)
13/30

おまけ 膝枕っていうのはね

楓の制裁後、紅葉は気絶してるのでミント視点です

「……生きてる?」

「さすがに左半身つぶすなんて本当にしないよ。

……いや、今日はギリギリだったかも。」

一応、安否の確認はとれた。無事らしい、一応。


「紅葉は?」

「気絶したよ。」


 また紅葉が気絶したのか。30分、楓が何をしていたのかは知らないが、

紅葉の悲鳴的に拷問の類だろうな。

 影の騎士シャドーに斬られた傷は平気で、楓の暴力には気絶する。

不思議な奴だ。普通、逆じゃないの?


 まあ、服についていた血は、おそらくちょっと斬られた程度だから

楓の延々と続く暴力という痛みと比べるのはおかしな話か。


 僕が、下を向いてうつむいていると、楓が

「本当にごめんなさい、うちの馬鹿が。」 

こう言った。

何について謝っているのか、僕にはさっぱりわからない。


「昨日の夜、私が一緒に寝ていればこんなことにはならなかったのに・・・。」

ああそういうことね。


「大丈夫だよ、楓。僕は気にしないから。」

「でも・・・無理やりだったんでしょ。」

「本当に大丈夫。楓が危惧するようなことは何もなかったよ。

ただ、紅葉に魔法についての話をしてただけ。」


「やっぱりはじめては痛いって・・・て、え?」

楓が驚いたようにこっちを見つめてきた。


「嘘じゃなくて?」

「ていうか、会ってすぐとかありえないよ。」

そう簡単に、そういう行為に及ぶとかありえないし。

 ……まだそういう経験もないし、それどころか彼氏すらできたこともない。

異性とは手をつなぐどころか話したことすらない。


 紅葉が初めての異性と話した相手だったと思う。


「どうしよう。お兄ちゃんに謝らなきゃ。」

「楓、素に戻ってるよ。」

おもわずお兄ちゃん呼びに戻ってしまったようだ。


「そりゃそうだよ。だってあれ、これじゃあ超理不尽な暴力じゃん!!」

「というか、やっぱりお兄ちゃん呼びなんだね。」

「そりゃそうでしょ。だって一番大事な人だもん。

ミントの耳が動いてないってことは、お兄ちゃんは気絶したままなんでしょ?」

「確かに気絶したままだね。それで、大事っていうのは家族的な意味で?」

「異性的な意味で!」

血、つながってるよね。


 そう言いたかったが、楓の突き刺さるような視線を見たら、

口に出せるのは、よほどの命知らずか、空気を読めない馬鹿のどちらかだろう。


「紅葉の前でも、お兄ちゃんって読んであげればいいのに。」

「……ミント、長年ドSキャラの私がお兄ちゃんなんて似合わないじゃん。」

「そういうもんなの?」

「そういうもんなの。」

そうなのか。なるほどわからん。紅葉、喜ぶと思うんだけど。


「あ、そうだ。ミントに聞きたいことがあるんだけど。」

「何?」


「何でお兄ちゃんに膝枕なんてしてたの?」

「紅葉にありがとうの気持ちを伝えたかったから。」

「何で?」

余計なことを喋っちゃった。影の騎士シャドーをどう誤魔化そう。


「あー、話してたら、新しい魔法を思いついたからかな。」

とりあえずの言い訳。幸い、楓にはそれ以上に重要なことがあるらしい。


「それで、何で膝枕を?」

「友達に、『感謝の気持ちを表すにはどうすればいい?』って聞いたら

 『膝枕をしてあげればいいと思う』って言われたからかな。」

「誰、その膝枕をお勧めした人。セレンさん?」

セレンはそういうことは絶対に言わない性格だろう。


「いや、アルが教えてくれた。」

「アル?」

「僕と同じ使い魔だよ。」

 

これは本当。4時間ぐらい前に連絡を取ったら、

向こうもこの世界にいるようだ。

 

 夜中の襲撃は他の国にもあったらしい。

一般人の目に触れる前に全ての殲滅が終了したらしく、何とか、事無きを得た。


「……ミント、膝枕ってどういう人にするか知ってる?」

「異性に感謝の気持ちを表すものでしょ?」

 膝枕のやり方は、アルに教えてもらった。

少し恥ずかしかったが、異性は喜ぶとアルが言っていたから、そうなのだろう。

アルのパートナーも男性みたいだ。僕の世界でも、かなり有名になっている。

なら、僕よりアルの方が異性に関しては詳しいだろう。

 

 あれ、楓がポカンとしてる。僕の答え違ったかな?


「ねえミント、本当にそう思ってやってたの?」

「そうだよ。」

感謝の気持ちを表すとかの理由じゃないと、こんな恥ずかしいことはできないよ。

まあ、途中で僕も寝ちゃったけど。


「ミント、間違ってはいないよ。」

間違ってはいない? 正解でもないの?

「膝枕っていうのはね。」

「うん。」

「普通、好意を寄せてる人にしかやんないんだよ?」

「僕は、紅葉に感謝してるから、少なくとも恨んではいないよ。」


 感謝って好意だよね。

 もし紅葉が行ってくれなかったら、

時間がかかりすぎて、さすがに人の目に触れるだろう。

 

 そして、魔力切れで僕が負ける危険もある。

70体を倒す際に、時間との戦いでもあったから

魔力を必要以上に消費してしまった。


 そういう意味で紅葉に助けられた。

感謝しないのはおかしな話だろう。

 


「好意っていってもね……」

「ん?」

好意っていっても?


「その人が異性として好きだっていう好意だよ!!

 膝枕なんてその人を異性として好きじゃないとあんまりやらないよ!!」


「え?」

頭の中が一瞬真っ白になった。

 え? 異性として好き?

つかの間、僕の頬が熱くなっていくのを感じる。


「そ――そ、それって――まるで――」

鏡を見なくても分かるぐらいに頬が熱い。

「ぼ――ぼ……ぼ僕が――」

一言一言、言葉を口に出すたびに、さらに真っ赤になるのを感じる。

「――紅葉のことが好きってことみたいじゃん!!」


頭が沸騰しそうだ。いや、もうしてるか。

「ミント、耳まで真っ赤だよ。」

「か、楓……。」

僕は、どうしようという目で楓を見つめた。

もし、紅葉にとっても、膝枕に対する認識もそうだったら、すごい恥ずかしい。

 あとで起きた時に、紅葉の顔が見れないよ……。

 

「――大丈夫!!」

「な、何が?」

楓は自信満々にそういった。

「椛も分かってくれるよ。」

いったい、楓は何が言いたいんだろう。


「お兄ちゃんは、私と椛、そしてミントの共有財産にしよう。」

「――ちがうよ!! 別に、紅葉が好きってわけじゃないんだよ!?」


 弁解しようにも楓は、一緒に頑張ろうって目でこっちを見てくる。

どうしよう。楓には、影の騎士シャドーを誤魔化すために

これ以上、この話が違うと誤魔化す言葉なんて言えないし。

 

 でも、あまり言われてて気分は悪くならない。どうしてかな?








 

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