寂しかったよ?
因果応報って言葉があるじゃん。あれって本当なのかって疑ってたんだよね。
あれってさ、いい行いをしたら良いことが、
悪い行いをしたら悪い行いが返ってくるって言うじゃん?
でも、実際にやったいいことを5個とすると、
返ってくるのはせいぜい3個ぐらいで、
どう考えても=にならないじゃん。
――でもさ、今目覚めたらこの言葉は正しかったんだなと思った。
残り2個の報いとかは繰り越してさ、そのうち届くんじゃないかな。
だから、いいことはたくさんした方がいいよ。きっとそのうち返ってくるからさ。
え、何があったかって?
――ミントが膝枕してくれていたのです。
いや~いくらロリ体系の女子だからといって、美少女の膝枕だぜ?
理由もこうなった経緯も全く不明だけどさ、
今までのいい行い100個分ぐらい使っちまったよ、多分。
ついに俺の時代が来た。これで俺も、
リア充なハーレム系の主人公の道を歩むことができるかもしれない。
まずは、この目の前のミントをおとしてヒロインに……。
「おはよう、死ね!!」
「ぐふっ。」
楓のかかと落とし。急所にあたった。効果はばつぐんだ。
「何でミントに膝枕とかしてもらってんの?」
ちょっと待って、今股間が痛すぎて喋れない。
ミントから離れて床を転げまわっている。
結構無様だが、男性の皆さんならきっとこの痛みを理解してくれると思う。
さっきの影の騎士に切られた傷の方が、まだマシだよな。
「あ、おはよう、楓。」
やべえ、ミント起きちゃった。
「ミント、おはよう。昨日は大変だったね。こんな変態に膝枕を強要されて。」
「? 僕は別に、やれって言われたわけじゃないよ?」
「きっとそうだよ。寝ぼけてて忘れてるだけ!!」
「いや、朝起きたらこうなってたんだ!!」
本当です、信じてください。
「うっさい、問答無用!! さっき眠っているミントに
セクハラをしようとしたところを、みたんだからね!!」
……くっそ、何で寝起きでテンションがおかしい所を見られてしまったんだ。
「……セクハラ?」
ミントが、冷ややかな目で俺を見ながら言ってきた。
声が冷えてる。あ、やばい。2対1は勝ち目が無い。
「セクハラじゃない。ただミントを起こそうとしただけだ。」
これは嘘ではない。起こしてから色々としようとしてたし。
誤魔化せばいける。大丈夫だ、問題ない。
「…………本当に?」
「……はい。」
セクハラじゃないです。セクハラ未遂です。
「……まあ、いいよ。」
「「え!?」」
俺と楓の声が重なった。ミントがこうも早く俺を信じるなんて。
ラッキー。お咎めなしだ。これで楓からの制裁もないぞ。
「さっきまでの夜は、すごい体力を使うことをやったから寝ぼけてたんだろうね。
先に紅葉が寝ちゃっていたのは驚いたよ。僕は結構寂しかったよ?」
……何か、遠回しな言い方だな。
楓には影の騎士のことを隠しておくからか?
なら、俺も協力しなきゃな。
「今の話、まさか!?」
「?」
「昨日の夜、何時ぐらいに寝た?」
「ええと。」
あの影の騎士を倒して、イウォークと会話して、
それでそのまま寝たから・・・
「確か、2時ぐらいだったと思う。」
ここは隠さなくていいだろう。今は8時。約6時間は、眠れたのか。
「服はなんで着替えたの?」
「夜中に、結構汗かいたからな。」
多分、ミントが着替えさせてくれたんだろう。
俺の血が付いたから着替えたとかはさすがに怪しまれる。
「あ、汗かいたって・・・。」
ん?どこにそんな疑問に思うことが・・・
「兄貴の馬鹿!!変態!!」
「え、なんで!?」
意味が解らん。こいつは何を想像して・・・
「ミントに手を出しちゃったのね!!」
・・・え?
「本当に最低!!ミントの抵抗できないような小さい体に・・・」
「やめろ生々しい!!絶対にねぇよ。」
R18になるだろ!!。さっきまでの俺のやろうとしてたことも
R15ぐらいだと思うが。未遂で終わって本当によかった。
じゃなくて。
「どこからそう思ったんだよ!!」
「可愛そうなミント。こんな変態に無理やり・・・」
聞いちゃいねえし。しかも体術においても、ミントの方が強いだろ。
いい加減にしてくれ。
「ミント、思い出すのもつらいと思うけど、昨日のことを詳しく教えて。
じゃないとこの変態を始末した時の言い訳ができない。」
俺殺される!?
「そうだね・・・。
昨日、僕は紅葉の部屋に制服姿で入って行って、
紅葉のベットに座った。」
「ふむふむ。」
「そのあと、僕に窓の外を見てごらんとか言ってたから外を見たんだ。」
見ていたのは、俺だったはずだが?
「それで?」
「そのあとは、ちょっと僕の口からは言いたくない。」
「……そうなんだ。」
そこで終わらないで。さしずめこいつの中では、
ミントが外に気を取られているうちに縛られて・・・とか思ってんだろうな。
……俺、終わったな。こいつの想像力、豊かすぎだろ。
「兄貴?」
「何。」
「左と右どっちが好き?」
左手と右手、どっちが犠牲になるかということだな。
「じゃあ左で。」
利き手じゃない左手を犠牲にして回復弾で回復すれば……。
「わかった、左半身の方が好きなのね?じゃあ右半身だけ残しといてあげるよ。」
そうきたか。回復弾は死んだら使えませんって説明書にあったな。
あ、ミントが笑ってやがる。さっきまでの言葉は確信犯だったのか。
眠っていた俺を運んだのでストレスでもたまったのかな。
一応、死んだときのために遺言を残しておくか。
悪い行いの報いは倍になって、しかもすぐに返ってくるみたいだな。
今回は、セクハラが俺への無慈悲な鉄槌につながったわけだ。
生きてたら、学校に行きたいな。
あれ、そういえば何でミントは俺に膝枕なんてしてたんだ?
1章完結です。
軽いおまけとシリアスな黒の国の話を挟んで2章に行きます。
読んでいただきありがとうございました。