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僕の飼い主と「青の魔道書」  作者: 暦 司
青の魔道書に選ばれし者(1章)
11/30

ギブアンドテイクってやつだ

「終わった……。」


回復弾の効果で傷を治したが、すさまじい疲労感が残っている。

魔力は、通常弾を撃てるほどは残ってない。


 つまり、俺の魔力は、ほぼ底を尽きたということだろう。

説明書に書いてある。使いすぎには要注意と。

 

 ……確かにこれ以上の消費は死にそうだ。今でも、足が言うことを聞かない。

ミントを待つしかないな。向こうが終わったら、そのうち来てくれるだろう。


 俺は、先ほどまで戦っていた大剣を持った影の騎士シャドーの鎧を背もたれに、その場に座り込んだ。

俺なんかの体重ではビクともしない。この鎧、重いんだな。


『よお、聞こえてる契約者?』


!? 誰だ!?


『身構えんなって。もう影の騎士シャドーは送ってねえんだ。

せっかくこいつの鎧に触れてくれてるんだから、俺と少し話さねえか?』

 頭に響く軽薄そうな男の声。ふと背中の鎧に目を向けると、

右肩の近くに、灰色の紋章のようなものが浮かんでいる。


「……お前はいったい?どこから話している?」

影の騎士シャドーに命令送るときの回線利用してるだけだよ。

まあ普段は、あらかじめインプットしておいた行動を繰り返すだけの人形だがな』


この口振り、影の騎士シャドーを操っている奴か?


『操ってるのはブレイズ将軍だ。そっちに送ったのはディール。俺は開発者ね。』

「!? こっちの心を読んでいるのか?」

『直接心に語りかけてんだ。そりゃあ、そっちの心の声は聞こえるさ。』

気にするようならOFFにするぜ?と彼は付け加えた。


「――つまりお前は、ミントの言ってた敵ってことか?」

『君の世界の敵でもあるさ。それにしても君、よくこいつに勝てたな。

わざとフリーズ機能をつけたとわいえ……さ。』

「そこに付け込ませてもらった。」

『気づいてねえのかい? 微弱ながら魔道障壁がついてたんだぜ。』

「……魔道障壁?何だそれは?」

 敵に聞くのはどうかしてると思う。だが、こいつは多分教えてくれる。

俺の予想通り、彼の口は軽かった。


『魔道障壁っていうのは、魔法を無効にする障壁な。

こういうのがねえと、戦争中に俺らの国が、連合相手に互角以上で

戦っているのは無茶というものだ。』

 

 まあそれでも、強大な魔法をくらうと、大半の障壁付き影の騎士シャドーでも吹き飛ぶがな。 

と彼は笑いながら付け加えた。実際の表情は見えないから、笑っているかのような声だったということだ。


『そっちの使い魔、ミントとか言ったっけ。斬撃魔法の神童か。

いくつかは深淵まで踏み込んでるって噂だな。

不知火とかは斬撃の深淵クラスと記憶してるが。』

「――俺には深淵とか言われても分からない。」

『だろうな。障壁知らなかったし。』

予想通り、とばかりに笑う男の声。

 何を考えてんだ、こいつ。全く読めない。


『おっと、そろそろ、そっちの使い魔がこっちに向かってくるな。

・・・ずいぶんと早いな。障壁付きも何体か混ざっていたと思うし、

彼女が相手したのはざっと70体以上だったはずだが。』

――70!? ミントが感知しきれなかったのか。


『この鎧はこっちに転送するな。あ そうだ、話につきあってくれたお礼だ。

歩けるぐらいには、魔力を回復してやるよ。』


彼がそう言った瞬間、少し体が楽になった。

「……俺とお前らは敵同士って扱いじゃないのか?

何で魔力を回復させる。」

正直体が楽になったのだから、文句はない。

ただ、彼が俺のことを回復させる理由は無い。

いったい何をたくらんでいるんだ?

  

『ギブアンドテイクってやつだ。こっちは少し情報をやる代わりに

そっちの戦闘能力を図らせてもらった。まあ、誰にも公開はしないがな。』

……公開しない? 

「――お前の目的がわからない。」

『楽しむことさ。』

本気で言ってんのか冗談なのか。マジで読めないな、こいつ。


『帰る前に一つ聞いていいか?』

「……何を。」

『名前だよ。』

「――人に名前を聞くときは……。」

『もちろん。俺はイウォーク。』

あっさりとこいつは答えた。

向こうにも人に名を訪ねるときは自分からと言うのがあるのかな?

 ――こういう場合、俺も名乗らなきゃいけないのか?


「――紅葉だ。俺の名前。」

『……ふーん。てっきりフルとかいう名前かと思った。』

「俺は日本人だ。」

しかも、何でそんな中二病のような名前をセレクトするんだ。


『わざわざ言葉はそっちに合わせたから、それぐらいは知ってるさ。

軽い冗談といったものだよ。

そろそろおさらばするぜ。では、また。ご縁があれば。』


 そういったかと思うと、俺がよりかかっていた鎧が急に消えた。

おそらくは転送されたのだろう。地面に頭を打ってしまった。


 地面に寝転びながら、俺は思った。イウォークか。

近い将来、再び彼と会う。何故だか、俺はそう思った。


 ――考えんのも疲れた。眠い。このまま寝てしまおうか。


 思考のブレーカーおろし、目をつむる。今ならよく眠れそうだ。

……ミントが、この場に俺を放置するなんて、多分しないよな?


 

  


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