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僕の飼い主と「青の魔道書」  作者: 暦 司
青の魔道書に選ばれし者(1章)
10/30

真夜中の襲撃(後編)

「……なあミント、さっきお前が使った魔法で全部倒すのは不可能なのか?」

答えは分かってる。当然できな……

「――できるよ。」

「え、できるんだ。」

じゃあそれでいいんじゃ。


「紅葉、魔法はイメージが大事ってさっき言ったよね?」

「そういえばそう言ってたな。」

「自分の半径500m以上のことを精確にイメージできる人がいる?

僕は耳があるけど、せいぜい把握できるのは半径300m程度だよ。」

「確かにそうだけど。」


 それがさっきの魔法を使えない理由になるのか?


「あの魔法を射程500m以上のばすと、対象の選択が大雑把になる。

全滅させることは可能だけど、ここら一帯全部の物を切断することになる。」

「……つまり、暴発の恐れがあるということか?」

彼女は頷く。

「多分、34体といったけどもう少し多い。把握できてるのは34体ってこと。

そいつら全てを殲滅するとしたら、半径1kmぐらいは

距離をのばさなきゃいけない。

ここが3kmぐらい先まで何もない平原とかだったら迷わず使うけどね。」

「じゃあ、お前が把握してる範囲だけとかは無理なのか。」

「できるけど、戦えなくなる。『不知火』は魔力の消費が激しいから。」

あの魔法、不知火っていうのか。



「――あ、そういえばミント。行く前にもう一つ、聞いていい?」

「何? 手短にね。」

「この銃、普通の拳銃と同じ使い方でいいのか?」

「……説明書読んで!!」

あ、本当に説明書ついてるじゃん。これ読めばいいのか。


「のんびり読んでる暇なんてないから、走りながら読んで。」

え、つまり戦闘中に?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 どうやらこの銃、外見はベレッタM92F辺りをモデルに作ったのかな。

だけど説明書を読む限り、それとは全然違う物みたいだ。

……マガジンが外せない。リロードの必要がないのか。

グリップに触れている限り、この中に勝手に銃弾がはいるのか。魔力ってすごい。

 

 あと、この銃。モードの切り替えというものがあるらしい。

回復弾とかも、モードを変えればできるみたいだな。


……スライドを引けばモードが変わる。

スライドの役目もこっちの世界とは違うみたいだな。


 超有能。初期のモードは俺の魔力を100分割するらしい。

99発までなら撃てるということか。

 

 スライドを引けば、200発(散弾)、400発(連射)、20発(回復弾)とかわるみたいだ。回復弾の状態でスライドすると、また初期の状態に戻るらしい。


 面白いなこれ。散弾も撃てるというのが、なかなか。


「さてと……」

戦闘開始といきますか。

俺は特別な人間というわけではない。何せ、普通の高校生だ。

 

 だから真正面からは挑まない。

この真夜中の暗闇という状況を利用させてもらう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 幸い、この銃は弾を撃った際に音があまり出ない仕組みになっている。

火薬を使わないという理由もあると思うが、魔法ってすごい。

 それが、影の騎士シャドーを倒すことに大幅に役立った。


 ジュースの缶、これが作戦の要だ。


 方法は簡単。自販機から缶ジュースを買う。置く、離れたところから撃つ。

缶の音を聞きつけてやって来た影の騎士シャドーを、迷わずヘッドショット。

 鎧が地面に落ちた。人間じゃないなら迷うわずに打てる。


 6KILL、最低あと8体か。まだまだ先は長いか。


 ――そしてこの銃、威力高い。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「人形だから行動が単純だな。」 

戦闘開始から30分ぐらい経過したか。現在12KILL。あと2体。

 この銃、魔力探知機能もついているみたいだ。持ってると、何処に影の騎士シャドーがいるのかがわかる。魔力の消失もわかるから、影の騎士シャドーを倒せたかどうかも分かる。ミントの言った通り、あと2体だと思う。

 一体は、移動ルート的に屋根の上を通ってるのだろう。もう一体は、近くの公園辺りをうろついている。

屋根の方を移動してた奴が、多分そろそろ俺の上を通る。

 「……3、2、1、0。」

 空に向けて発砲する。30発ぐらいの散弾。

ガシャッと音が聞こえた。ドンピシャだったっぽい。これであと一体だ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「これで、最後か……。」


遠距離から狙い撃とう。照準を合わせ――

「……………。」

!? こっちを見ている、気づかれたのか!?


影の騎士シャドーはこちらに向かって走ってきた、

だが、この距離なら俺の弾丸の方が速い!!

 

 引き金を引いた。だが、その弾丸は剣ではじかれた。

「な……。」

 影の騎士(シャドー)が剣を振りぬく。

やばいな、これは回避できるか?


 無慈悲にも剣が振り下ろされる。完全には回避できないか。


「ぐ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

腕が、左腕が……。折れてたけど。

 ――いったん距離を取ろう。とりあえず、モードを変えて自分に回復弾を撃つ。

さっきミントに折られたはずの骨まで治った。

便利だが、何かがごっそり減った気分になる。

回復弾は魔力の消費が多いらしいから、これが魔力を失うという感覚なのだろう。


 ……近くで見て初めて気づいたが、その影の騎士シャドー

持っていた武器は今までの影の騎士シャドーとは違った。


 ほかの個体はRPGでいう兵士の剣とかそれぐらいの剣だったのに、

俺の腕を切ったこいつは、いわゆる大剣と呼ばれるものだった。


「……………」

剣で斬りかかってくる。回避はできるが、攻撃後のスキが全くない。

一度攻撃をギリギリで避けて撃とうと思ったが、剣の側面で殴られた。


 ――しかもこいつ、だんだんリズムが速くなってきてる。

このままじゃジリ貧だ。なにせこっちの攻撃は弾かれる。

向こうの攻撃はまともに食らったら死ぬ。

まともに食らわなくても、剣で斬られると相当な痛手になる。

 多少喧嘩慣れしてるとはいえ、これでも普通の高校生だ。

魔法など使えないし、武器はこの銃だけ。 


 この圧倒的に不利な状況を突破する方法は――あるにはある。

俺が予想した通りならこの作戦であの影の騎士(シャドー)を壊せる。

でもできればやりたくない。もしミスったら普通に死ねる。


 ――が、やるしかないだろう。弾は通常モードであと20発しか残っていない。

連射で59発分撃ちこんで、5発を回復に回す。それでいけるはずだ。


 その影の騎士シャドーが剣を振り落してきた。

これを避けても、次の攻撃でTHEENDだろう。

 だから今回は……急所を外してあえて攻撃を受ける!!

我ながら無茶な作戦だ。もし、俺の予想通りにいかなかったら死ぬだろう。


 ――もし追撃を受けたら俺の負けだ。


「…………。」

「ぐっ……。」

 切れれた場所から血が流れる。死ぬほど痛いが、作戦通りなら……


「…………。」

影の騎士(シャドー)は……動かない。


「――攻撃があたったのがそんなに嬉しいか?

だが、まだ俺を仕留めてはいないぜ。」

 こいつの攻撃後に隙はない。その巨大な大剣を盾にされて終わりだ。


 ――だがこいつの攻撃にあたった場合話が違うみたいだ。

3秒間ぐらい、こいつの動きが止まる。

さっき左腕が切られた時も追撃が無かったのはこのためだろう。


「これで、お前はチェックメイトだ。」

1度行ってみたかったこの台詞を、まさか現実で言えるとはな。

こいつに向かって撃てる分連射59発全て撃ちこんだ。 

 

 俺が頼まれた最後の1体、大剣の影の騎士シャドーが今、崩れおちた。



 


 



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