タイトルコール
この作品は作者の処女作となります。
ご満足いただけるか心配ですが、何かの片手間にでも読んでいただければこれに勝る喜びはありません!
文章でおかしな所や矛盾点を見つけたため少々手直しをしましたorz
かつて日本という国において最も天に近づいた建築物『東京スカイツリー』
しかし2025年現在、技術の粋を集めて造られたそれは、最初から存在しなかったかのようにこの世から姿を消していた。
代わりにそこにあるのは一本の樹。
樹と呼ぶことすら憚られるような巨大な、巨大な樹が一本あるだけである。
人の造り出した無粋な電波塔の高さを悠々と越え、今尚成長し続ける様は皮肉にもスカイツリーと呼ぶに相応しいものだろう。
なぜこのようなことになったのか、詳しい事を知る者は何処にもいない。
ある日突如としてこの異様な風景は生まれたのだ。
そして人々が当たり前だと思い過ごしてきた生活を、常識を嘲笑い巨木が姿を現したその時、世界のルールは改変され確かに物語は始まったのである。
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カーテンの隙間からさす一筋の陽光。 部屋を照らすには不十分なそれは、しかし人を起こすのには十分であったらしく、ベッドの上で目元を照らされた誠は覚醒しきれない様子でうっすらと瞼を持ち上げた。
途端、目覚まし時計のピピピピという軽快な音が狭い室内に響き渡る。
「もう、おきてるってーの……」
主人に朝を伝えるため懸命に喚き散らす時計を殴るようにボタンを押して止める。
掛け布団をはねのけ立ち上がると、ベッドの温もりへの未練を絶つために勢い良くカーテンを開けた。
朝日が目に痛いがちょうどいい眠気覚ましであろう。
一般的に言うならお世辞にも住み心地がいいとは言えないこの家の数少ない利点は窓が東向きにある事か。
最初は朝日を毎日浴びるのは健康的と言ってここにしたのだが、そのことは完全に忘れた様子で面倒な日課、程度に捉えているようだ。
頭の中がすっかり覚醒すると何故自分が目覚まし時計をセットしていたのかを思い出したようで慌てて時計を見る。
なんとか約束の時間には間に合うのを確認すると、胸をなでおろしてどっかりとベッドに座りこんだ。 スプリングの軋む音が響く。
机の上で携帯が己の存在を示すように震えているが無視する。 大方の相手はわかっているからの 暴挙である。
一段落着いたところでそれよりもと立ち上がるとクローゼットを一瞥する。その中にある服のレパートリーが少ない。 日常的にでかけないことがうかがえた。 そこから着慣れた紺のデニムと赤いジップアップパーカー、それからロゴ入りの白いシャツを取り出す。
着替え終えたところで再び時計を見るとある重大な事実を思い出す、確かこの時計は少し遅れているのではなかったか、と言う事を。 さきほどまで無視していた携帯を起動させると時計よりも10分遅い時間を示していた。 日常生活には支障はないうえ、学校に行くために目覚ましをセットした時はちゃんと遅れている時間を考えてセットしてはいたのだ。 さらに言うならば目覚ましを学校に行くとき以外使用する事が無いくらい休日に外出しない事もたたっていた。
こうなると身だしなみを整えている間に約束の時間に間に合わないかもしれない。 しかたなく朝食を諦めることにしたらしく、口惜しそうに前日の残り物の味噌汁と冷奴を睨んでいた。
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日が昇ったからといってその恩恵が全ての場所を照らせるとは限らない。
ここもその恵まれない土地の一つだ。
人一人通れる程度の幅しかない路地裏は、その狭さのためかジメッとしたカビ臭い空気に包まれている。
細々と入り組んだこの迷路を流れるように歩く人影。
伊東 駿美はピシッとしたこの場にあまりに合わない格好をしている。
その上、足取りに迷いはなく、当たり前のように進む姿には違和感しかない。
そうは言っても駿美以外に人影はなく、つまりは違和感を覚える人間などいないのだから彼にとっては何の問題もないのだが。
錆びれた鉄扉の前で足を止めるとそれを見越したように中から鍵を開ける音がする。
ギギギと耳障りな音をたてながら内側へと開く扉。
「よう。お前にしては珍しく時間に遅れたじゃねぇか、なんかあったのか? 」
熊のような野太い声とともに扉の内側からぬっと巨漢が姿を現す。
「遅れたことは謝ります。しかしとりあえずは中にいれてくれませんか」
「カッ、あいかわらず生真面目な野郎だな」
「大道さんの方こそあいかわらず暑苦しいですね」
その言葉に巨漢、大道 玄慈はニマリと笑うと手招きしながら奥へと姿を消す。
案内された先は中々の広さを持った小綺麗な事務所だ。
もちろん大道が掃除などするはずもなく、ここが人を招ける環境を保っているのは別の人間のおかげだが。
駿美にソファを勧めると自分は飲み物を取りに姿を消す。 戻ってきたその手にはよく冷えた麦茶を二つ持っていた。
「とりあえず、無事で何よりだ。最近は物騒な話ばかり聞くからな」
大道の言う物騒な話というのには心当たりがある。 というよりもその事について彼を訪ねたのだ。
「その事についてなのですが、新しいことがわかりました」
「それも直接報告しないといけないレベルの、か」
大道が言葉を継ぐ。
「ええ、まぁ。そういうことです」
駿美はスッと目を細め麦茶を飲み干す。 そうすると駿美のただでさえ切れ長の目は、殆ど閉じているのと変わらないように見える。
「なんだ、やけにもったいぶるじゃないか」
ここにきて黙り込む駿美を、しかし大道は急かすようなことはしない。
やがてコップの氷も全て溶けた頃、駿美はゆっくりとその重々しい口を開いた。
機能を完全に使いこなせてなく、読みにくいところなどあるかもしれません。
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勢いで投稿したためまだ先ができていませんorz