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という夢をうっつらうっつらしながら見てしまうほど退屈だった。かれこれ一週間近くは神社に身を隠して怪人を待ち続けているのだが、怪しい奴はこないで、中学生が溜まったり、小学生が缶蹴りをしていたりするだけで、怪人は現れない。
何やってんだろう。
そんな宙ぶらりんの現状は緊張をほぐし、その代わりにすっかり怠い気分に陥った。
俺は、帰っていいかな、といつもより早めに藤堂に頼み込んだが、呆気なくその案は却下される。
「村長の言っていることは正しいの。今日こそ来るって……」
「そうか」
俺は閉口する。俺の物知り村長に対する信用度は、地に墜落していた。
かれこれ一週間。
物知り村長は毎日毎日、
『今日こそはやってくる』
と藤堂に伝えてくるのだが、それがはずれる。
俺の首吊りに関しては一発で当てた割には、そっから後は不調だ。
物知り村長を頼りにしすぎだったんじゃないかと思えてくる。そのことを藤堂に言うと、彼女はを横に振った。村長を信じるらしい。
「内側の世界を救った時に、一番、私の味方であってくれた方なんだよ」
「じゃあ何で怪人は現れないんだ」
「それは、村長さんだって間違える時はあるよ」
「もしかするとさぁ」
「うん」
「無力なんじゃないの村長さんは。外側の世界は広すぎて、村長さんの手には負えないとか」
「違うよ。明日辺りには現れるよ。奴らは私たちの思考を電波にして受け取ることもできるから、それで警戒して、なかなか現れないんだよ」
「警戒ねえ……なら、待ってても連中は現れない」
「私たちが疲れた時を狙って現れるんだよ。つまり、今みたいな時にこそ、奴らはチャンスだと思って現れる」
「村長はなんて言ってるの」
「もうすぐだ、落ち着いて待て、って言ってる」
「なるほど。わかった」
という訳で俺たちは寒空の下、怪人を待つことにした。
俺は拝殿の外で待つので、明らかに藤堂よりも寒い思いをしている。それでも文句はあまり言わずに毒電波の発信者である怪人を待ち受ける。
三十分、一時間、二時間、と。
二時間と十分くらいが経過したころ、人が、入口の方からやってくる。
目を凝らした。
だがその人は、お賽銭を投げて二礼二拍して、帰っていった。
怪人は現れない。