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 意識を取り戻したと同時に、”本当にごめんなさい”と謝罪される。どうやらわけのわからない誤解は解けたらしい。何がどうなってそうなったのかまったく理解できないが。そもそも何故に夜の神社で、金属バットを振り上げる女がいるのか。

「弱点は頭部だと聞いていたから……」

 金属バットを振り回したことに対する弁明のような発言を繰り返す彼女の、名前を聞いてみた。

 するとやや奇妙な間を空けてから彼女は答えた。

「私の名前は、藤堂 風羽美。あなたの名前は?」

「俺の名前は、国元 尋由」

「やっぱり人間なんだ。ちゃんとした名前もあるんだ」

「当たり前だろ。少なくとも怪物になった覚えはないな。お賽銭泥棒というわけでもないよ」

「私もお賽銭泥棒ではないよ。ちゃんと人間で、世の中の平和を願っている女子高生」

「若いね。金属バットは若さ故の過ちだね」

 藤堂は顔を真っ赤にして、あわあわ、とする。両手を素早く左右に振る。

「ごめんなさい本当にごめんなさい! ついにあいつらが姿を現したのかと思って……」

「あいつら?」

「そう、あいつら」

 こんな真夜中に現れる上に人間じゃない生物。頭部が弱点で、人間に似ている。エイリアンか何かですか?プレデターとか。

 やはりどうにも、この藤堂 風羽美という女子高生、怪しい。

 俺は起き上がると、拝殿の扉が開いているのが目に見えた。それに伴って拝殿の中にパソコンが置いてあることにも気が付く。それこそが人魂のようなぼやんとした明かりを放っていたのだ。ノートパソコンをわざわざ拝殿に持ち込んで、何をしていたのだろう。この娘は。

 俺は彼女のことを知るために、いろいろと質問をしてみた。思いつく限りのことを尋ねて、夜を拝殿で過ごしていた女子高生を困らせた。いくつかの質問を重ねたが、あまりピンとくる返事ではないので思い切って俺は、

「君は危険人物なのではないかい。例えば、何か罪を犯したとかね」

 と尋ねてみた。

 すると彼女はやや眉をひそめて、困ったような素振りを見せる。

 しかしやがて、こういう答えが返ってきた。

「私は世界を、救わなくては、いけなくて」

 噛み締めるような言い方だった。

 さらにこう付け加える。

「そして、私の内部にも、世界があるんです」

 俺はちょっと泣きそうになった。

 この人、なんか怖い。



 

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