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「あなたが国元 尋由ですね。どうも、こんばんは」

 ペコリとお辞儀する。中学三年生くらいだろうか、身長は普通くらいで、髪型も普通。そんな少年が家にやってくる理由といえば、そうだ、怪人の件に決まっている。

「もしかして君、藤堂 風羽美のこと知ってる?」

 彼はこくりとうなずく。

「話が早くて助かります。そうです、藤堂さんの件で訪ねています」

「じゃあ君はあいつの居場所を知っているのか?」

「知ってはいます。ですけど……」

「けど?」

「……とりあえずここで話すのもなんです。近くに丁度良い喫茶店とかあります?」

「いや、公園なんてどうだろう」

「わかりました。じゃ、ちょっと行きましょうか」

 二人並んで歩き出す。

 近くの公園に到着するまでの間、そわそわと落ち着かない。なにかがあった。藤堂の身に一体何が起きたのか。この突然訪ねてきた男子は何者なのか。俺の名を知っているのは、おそらく藤堂に教えられたのだろうか。

 公園に到着すると、ブランコに乗った。そして互いにもう一度しっかり自己紹介した。

 俺が自分の名を改めて名乗ると、燈名 六也、と彼は自分の名を俺に教えた。

 聞いたことない名前の中学校に通っている、中学二年生だそうだ。十四歳。九才も年下の人と接する機会はなかなかない。緊張する。いや、緊張してる場合じゃない。

 いろいろと尋ねてみる。

 別の地域に住んでいるらしい。ここから車で一時間はかかるところに自宅があるという。道理で中学校の名前も初耳なわけだ。

 怪人に改造されそうになっていた所を助けられたんです、と彼は震えながら言った。こんな若の

い子を改造しようとするとは、連中は見境がない。俺は眉根を潜めた。

 それを藤堂が助けたらしい。

 まさにヒーローだ。女だからヒロインか。まあそれはどっちでもいい。

「それで、これを預かったんです」

「これは」

 薬だった。俺が怪人を再発させないように、わざわざ燈名くんを使って届けてくれたのか。

 しかしなぜ燈名くんが。藤堂が自分で渡しにきてもいいはずだ。

 それはやはり、何かがあったということなのだろうか。

 俺は心拍数をあげながら、燈名くんに尋ねる。

「藤堂 風羽美は、どうなったんだ」

「彼女は、もう死んでしまったかも」

 何を言ってるんだと思った。

 死ぬわけがない。あんな無茶苦茶なヤツが、そう簡単に死ぬわけがない。また一人で本部に出向いてしまったのか。だが、それでも藤堂は生きていそうな気がする。あいつは頑丈で、そして世界から浮かび上がっている。

 だから、きっと生きてる。

「薬、ありがとう」

 俺は燈名くんに別れを告げて、神社に向かった。

 

 

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