第六話 第二部 トリプルエースと秘密兵器
亜弓「……あ、はい!」
よ、呼ばれた。私の努力が報われた。よかった…。まだ野球を続けていてよかった。
日下部「頼むぞ。」
亜弓「…はいっ。」
日下部「泣くな泣くな。」
そういわれたって涙はでる。すごくうれしいもの。こんな人たちと一緒に野球ができるなんて。
日下部「それと日高もここに立っていてくれ。」
亜弓「え、あ、はい。」
日下部「次、十一番! 館川!」
館川「はいっ!!」
ここまでで一番大きい声で返事をしたのは館川だった。選ばれて良かった。
日下部「日高、芦毛、館川。トリプルエースは任せたぞ。」
芦毛「はい!!」
亜弓「は、はい!」
館川「うっす!」
日下部「よし、もどっていいぞ。」
私たちがトリプルエース、これは重要だ。私たちはしっかり抑えるという使命が渡された。しっかり果たさなければ。
日下部「十七番までいっきにいくぞ! 呼んだ順が背番号だ。田辺! 杉地! 沖田! 米倉! 野中! 池田!」
ここまで伊沢と由紀が呼ばれてない。どうしてなのだろう。まず由紀は確実なまでの成績を残しているのに…。
日下部「十八番! 羽葉!」
由紀「はいっ!!!!」
誰よりも大きな声で返事をしたのは由紀だった。よかった。由紀が選ばれて。
日下部「羽葉、お前はこの背番号だが秘密兵器だ。ここぞという場面と使いたい試合ではドンドン使っていくからな。この番号は相手に油断させるためもある。俺は期待しているからな。頼むぞ!」
由紀「はいっ!」
由紀が信頼されているからこの番号ということなのだろうか。ものすごく意味がありそう。そして由紀のあの笑顔、とてもうれしそうだった。これで後は…伊沢が呼ばれていない。これも野球だからこその運命なのだろうか。
日下部「十九番! 堀川!」
堀川「はいっ!」
三年生の先輩が呼ばれた。これであと一つ。二十番だ。果たして選ばれるのだろうか…。
日下部「最後だ! 二十番!」
最後だ、これで選ばれるのは…。
日下部「伊沢!」
伊沢「はい!!!!」
伊沢が呼ばれた。よかった。本当によかった。そして背番号が決まった。
日下部「呼ばれた奴は呼ばれなかった奴のために精一杯戦え! そして呼ばれなかった奴は悔しさがあるだろうが、応援してくれ! みんな、今年こそ甲子園で優勝するぞ! わかったな!」
皆「はいっ!」
私の出番が来たら絶対に抑えてみせる。そんな気持ちで行くことにした。