第五話 第三十六部 館川の魔球と脱水症状
投球練習が終わると五番の野口がバッターボックスに入った。館川はどんなピッチングを見せてくれるのだろうか。
館川「(日高も良いピッチングを見せたけど俺だって見せ付けてやる。本当のエースは俺なんだと!)」
友亀「(初球からいくぞ!)」
館川がランナーを気にしながら足を上げてサイドスローで投げた。
ググッグッ
なんだこの球は!?
野口「(ボールがこねぇ!)」
ブン! バシン ストライクワン!
アレは何だ? チェンジアップか? いや、それにしては曲がりが大きい。すごい、いつの間にこんな球を投げれるように…。そしてまたセットに入る。
…ザッ シュッ!
あっ、牽制! ファーストランナーが出すぎている!
パシンズザザザ… アウトーーー!
大島「……ちくしょお!」
友亀「ナイスピッチャー!」
池之宮「ナイス判断だ!」
なんて上手い牽制なんだ。しかも私の出したランナーを刺してくれた。とても嬉しい。さらには自分の投球にも余裕が持てるようになった。これでツーアウト。館川はすぐさま打者に集中し始めた。
グググッ ブン バシン!
ストライクツウ!
全くタイミングが合っていない。これなら簡単に押さえられそう。私と違ってスタミナはたくさんあって配分もしっかりできそうだ。さらにはコントロールも良い。そして次の球を投じるとき、ワインドアップになった。
牛田「走れ!」
もちろんセカンドランナーは走っていった。ワインドアップでは牽制ができない。フリーな状態だ。しかし、
シュゴーーー バシーン!
ストライクバッターアウト!
館川「しゃあああ!」
友亀「ナイピーー!」
野口「手が出なかった…。」
相手のタイミングを見失えすれば空振りなんて簡単なことだった。すばらしい投球術だった。こんなピッチングが出来るところが私との大きな違いだ。
由紀「おっ、亜弓お疲れ様。」
手を出してハイタッチした。
館川「見てたか日高。」
亜弓「うん、すごかった。」
すごかった。私もあんなふうに…。
亜弓「あれ?」
由紀「どうした?」
視界がふらつく。足に力が入らない…なんで…。
バタン!
由紀「ちょっ、亜弓!?」
深沢「おい大丈夫か!?」
亜弓「水が欲しい……。」
あぁ、たぶんこれ脱水症状だ…。疲れで動けなくなってる…あ…意識が…。