第五話 第三十四部 気合入れ
亜弓「ヒット打てなかったよ。」
由紀「仕方ないよ。疲れだってあるし。」
由紀がフォローした言葉の中には「疲れ」が原因のようにいった。私自身としては疲れてなんてあまり感じない。でも由紀が見てそういうのであれば本当のことなんだろう。相手の選手は私と違ってスタミナがある。抑え方は私より多くあるはずだ。私はまだまだ走りこみが足りないのだろうか。
コポポポ
ジャグからスポーツドリンクが水滴がポタポタと落ちるように出てくる。そろそろなくなりそうだ。すこししか入れなかったが、飲むと体に染み渡るかのような感覚が私の体をめぐった。
シューーキィーン!
打球音が聞こえたので振り向くと館川の打った打球はサードに。良い当たりだがサードの守備範囲だった。綺麗にさばかれてアウト、スリーアウトチェンジになった。
由紀「さて亜弓、頼むよ!」
そういって由紀はクルリと一回転してセカンドに向かっていった。由紀は絵になるなあ。あんな選手に私もなりたい。私も笑顔を出すために、そして気合を入れるため。
亜弓「しまっていくよーーー!!!」
私自身への気合だけれども叫んだ。
由紀「おーー!!!」
海鳳「しゃああああああ!!」
友亀「よし日高、いくぞ!」
館川「たのむぞ!」
自然に周りがノッてくれる。だから私も「よしっ!」とグローブを自分の胸にあてて心の中で叫んだ。そして私のこの試合最後の投球回の七回のマウンドが始まった。