第二十二話 第三部 新山と二人きり
皆「お疲れ様でした!」
練習を終えて私たちは着替えていた。いつもの待ち合わせ場所に行くと瞳が荷物を持っていた。
瞳「あ、亜弓。ごめん、ちょっとお願いがあるのだけど。荷物を見ておいてくれないかな? マネージャー同士で簡単なお話があるみたいだからちょっと行かないといけなくて。」
亜弓「わかった。由紀も教室に忘れ物してたって言ってとりに行っているから。」
瞳「ありがと! なるべく早く戻るからね!」
そういって瞳は走ってマネージャのいる所へと向かっていった。今日も練習疲れたけど…あと数日もすれば地区大会が始まる。春の選抜へと向けた…甲子園に行くための大会、地区大会を勝ち抜いて、埼玉大会も。そして関東大会を勝ち抜けば甲子園の道が…切り開ける!
篤史「あれ? 日高か。どうしたの、そんなに荷物を見て。」
亜弓「新山君…うん、ちょっと用事で皆がいろいろとね。」
篤史「そっか。結構大変だな。」
そういって新山は荷物を置いて背伸びをした。二人きり…何か…話すことはあるのだろうか。言いたいけど…緊張する。
篤史「大会に向けての調整はどうだ?」
亜弓「あ、うん。問題ないよ。同じ地区に甲子園決勝で戦った東光大付属越谷高校とかいるから…おそらく厳しい戦いになりそうだけどね。」
篤史「そっか。地区一緒だから大変だよな。となるとそこを勝ち抜いていけば…埼玉明治高校とかも強いよな。」
あの高校…私が公式戦で初先発した所、そして中学の仲間がいる所。私たちはあのチームに勝たなければ…甲子園に。
篤史「勝とうな。」
亜弓「うん。……あ、あの。」
篤史「どした?」
私の口が動いた。今しか…今言わなければ。
亜弓「あの…こんど暇なときがあったら…。食事にいきませんか?」
篤史「ん、自分と? 大丈夫だよ。」
亜弓「あ、ありがとう!」
よかった、伝えておいてよかった! こんなにやさしく受け答えてくれるなんて…。
篤史「そしたらさ、一日目の次の日に知り合いと会う約束をしているのだけど、どうかな? 一緒に来ないかな? 日高も調整あるから練習そんなに多くないはずだから。」
亜弓「あ、うん。いいよ。でも…二人でも…行きたい。」
私の口から出る言葉とは思えない言葉が自然と出てしまった。恥ずかしい、すごく恥ずかしい。新山に今の自分の顔を見られたくない…。どうしよう、どうしよう。
篤史「かまわないよ。そしたら…その次の休みの日にでも行こうか。」
亜弓「あ、ありがとう!」
私の思いが伝わってくれた…。ありがとう、新山。でも…せっかくの二人での食事だから…楽しまなきゃ…!




