第五話 第二十四部 名古知多の反撃。
由紀「亜弓。」
私がマウンドに向かおうとすると由紀が後ろからポンッと肩を叩いて言った。
由紀「この回から気をつけて。相手もずっと黙ってるというわけじゃないと思うから。全力で投げることは忘れないでね。」
そういって由紀はグローブを持ってレフトへ行こうとした。
深沢「伊沢、交代だ! 館川いくぞ。」
館川「はいっ!」
そういって伊沢を下げて館川を出した。
深沢「羽葉!」
由紀「はい。」
深沢「前に書いた紙に何処でも守れるって言ってたよな。セカンドいけるか?」
由紀「もちろんです!」
深沢「よし、伊沢が降りて伊沢のかわりに館川がレフト、レフトの羽葉はセカンド、セカンドの米倉はショートだ。いいな!」
由紀・館川・米倉「はいっ。」
深沢「館川、お前はいつでも投手として出れるように準備もしておけ!」
館川「任せてください!」
深沢「日高はいけるところまで全力で投げろ!」
亜弓「はい!」
ポジションが変わった。由紀が近くで守ってくれるのはとても心強いことだ。そのためにも私は全力で投げなきゃ。
五回のマウンド、相手は四番の坂田からだ。この回から…。私が打たれるということを予測しているのだろうか。そうだとしたら全力でいけるところまで投げるだけだ! だから私は!
シューーー バシン!!
ストライクワン!
絶対に抑えてみせる!
坂田「(明らかに早いな。さて、タイミングは早めにとっていかなければ。直球狙いだ。)」
友亀「(一球ストライク変化球、もう一球ははずす変化球を投げた後ストレートで抑えよう。)」
友亀からのサインはスラーブ。タイミングをはずすように!
ググググッ バシーン
ストライクツー!
坂田「(あくまでもストレート、ストレート狙いだ。)」
次はチェンジアップをわざとはずすように…低めに!
グググッ バスン
ボールワン!
相手はタイミングこそ合ってなかったものの、振りはしなかった。さすが四番だ。そして次のサインは…。
友亀「(全力ストレートだ。)」
坂田「(次はストレートだ。絶対来る!)」
亜弓「(思いっきりストレート!)」
これで三振だ。振りかぶってミットに向かって思いっきり投げるっ!
シュゴーーー
坂田「(早めに振って!)」
キィーーーン!!!
友亀「なっ!?」
坂田「しゃあああ!!」
全力ストレートが打たれた。ただ打たれただけでなくタイミングバッチリだった。打球は私の頭上を越えてセンター前に落ちた。
設楽「ナイバッチン!!」
塚和「よくやった!!」
牛田「こっから打っていくぞ!」
今のは読まれていた。そうに違いない。まず初球から全く振らなかったことに気づいていればこうなることはなかった。やられた、このチームはやっぱり強い!