第二十話 第五十二部 足の震えが
私と由紀、皐月は室内ブルペンへと入っていく。室内からのあの音はいったい何なのだろうか。私達はおそるおそるブルペンの見える位置まで移動する。
亜弓「あれって…新山?」
由紀「新山がいるの?」
皐月「受けているのは…千道?」
マウンドには新山が上がっていた。しかしかなり疲れているようにも見える。もう何球もなげているのだろうか。
千道「四球目!」
篤史「…ああ。」
まだ四球? だというのにあの疲れようなのだろうか。しかし新山はノーワインドで構え、大きく踏みだす。
亜弓「…!!」
その瞬間、私達の体は震えた。見ているだけでのあの迫力、そしてあの一球にこめた思い。とてつもないものが感じた。そして球が放られる。
シュゴオオオオ バシューン!!
千道「…ナイスボール! …やっぱりすげえや。これでブランクがあるのか。それに球の雰囲気は前より良い…。やべぇよ。足の震えがとまらねぇ。」
千道の言葉通り、見ている私達でさえ足が震えていた。なんという球なのだろうか。こんなの…打てるわけがない。
篤史「…こっそり見なくてもいいよ。来るなら来てもいいよ。」
皐月「えっ!?」
私達がいることに気づいていたのだろうか。私達は向こうへと向かおうとした。しかし足が震えて…動けない。なんだろうこれ、どうしてなのか。意識しているのに前へと…進まない。
由紀「えっと…お願いがあるのだけど。」
由紀も震える足をなんとか踏み出して歩いていった。私もそれにつられて歩くことが出来た。いったい何を考えているのだろうか。
千道「海藤、いたのか。」
皐月「は、はい…。」
由紀「あの…バッターボックスに入ってもいいかな?」
篤史「あ、いいよ。それの方がこっちもありがたいし。千道、あと五球よろしくね。」
あと五球…いったいどんな球を投げるのだろうか。さっきのようなすごい球を…また見ることができるのだろうか。




