第二十話 第四十三部 その実力
栗山「打撃練習入るぞ!」
皆「はい!」
私達はすぐに打撃準備と守備につき始めた。私はレフトへとグローブを持って走り始めた。由紀もすでに移動していて体を動かしている。
亜弓「ねえ…やっぱりあの人すごいよ…とんでもない雰囲気持っているし。」
由紀「そうだね。でも…なんだろうね、何もしていないときは何も感じない。いままでない感じ…、なんだろうね。」
そんな話をしていると前から新山がやってきていた。え? レフト? まさか由紀と同じポジションなのだろうか。
篤史「ふぅ…。えっと、どんな感じでやっていくのかな?」
亜弓「え? 私?」
新山は私の顔を見て聞いてきた。こうやって改めて聞かれるとなんだか…緊張する。というか胸がすごくドキドキする。
亜弓「えっと、打球が飛んできて動き終わったら後ろに回るといった感じです。」
篤史「あ、なるほど。ありがとう。」
新山はお礼をいって後ろの列に並んだ。なんか…後ろにいるだけでドキドキする。
ギィイイン!
由紀「っと!」
由紀は大きい打球をダッシュで追いかける。そして落下地点に入り捕球体勢に入る。
バシン!
篤史「ナイキャッチ! 足も速いし判断の早さもすごいね。」
由紀「私の得意分野の一つだからね!」
すごい、由紀はもうすでに気さくに話しかけている。けど…由紀が男子にいきなり気さくに話しかけるのは珍しいかもしれない。最初は丁寧に話しかけたりするけど…なんだろう、女性っぽさがあるからかな?
篤史「これで…自分の出番かな?」
新山は自分の出番が来るとゆったりと体を慣らしている。そして息を入れると同時に構える。
由紀「!?」
亜弓「何…?」
池之宮「…やべえだろ。ゾクゾクするぜ。」
構えただけなのにものすごい雰囲気を感じた。こんな選手は初めてかもしれない。プロを探していたって…メジャーにもこんな選手はいないかもしれない。
海鳳「(だからこそ…あの場所に打ってみてえ!) っしゃああ!」
海鳳が声をあげてバッターボックスに立っている。二箇所からバッティングのボールが放たれるが、海鳳はかなり意識をしているはず。そして…とんでもない集中で新山は構えていた。
シューーー
海鳳「(これなら引っ張る!)」
ギィイイイン!
ダッ
由紀「はやっ!?」
私は目を疑った。新山はボールがバットに触れ、打球が飛んだ瞬間に走り出していた。しかもボールからは目を切っている。この判断力と瞬発力は何なのか。
篤史「オーライ!」
すでに落下地点に入っている。あんなに外野の深い位置だというのに。
バシン!




