第二十話 第二十七部 球が来ない
亜弓「由紀、ナイスバッティング!」
私は由紀に向かって声をかける。由紀のおかげで大きなチャンスが生まれた。ワンアウト二塁、バッターは二番の沖田が入る。相手投手もかなり集中している。だからこそここで打っておけば…流れがやってくる…!
シューーー バシン!
ストライクワン!
沖田「(球速は遅いんだよな。だけど打ちづらい。打つためには…ためてためていかなければ!)」
シュルルル バシン
ボールワン!
沖田はしっかりとボールを見ている。じっくりと見ているおかげか、落ち着けている。この落ち着きがずっと続いていけば…きっとヒットも出てくるに違いない…!
シュルルルル
沖田「(ここだ!)」
ブシィ バシン
ストライクツー!
沖田「くっ。」
瑞華「ナイスピッチ! 追い込んだよ!」
瑞華のリードによってツーストライクと追い込まれている。それでも沖田は落ち着いている。落ち着いているなら…まだチャンスはある!
瑞華「(これで。)」
酒井「(よし、わかった。)」
酒井が足をあげて思い切り腕を振る。
酒井「ふんっ!」
シュッ
沖田「(なんだこれは…球が来ない。まだこないのか。ストライクゾーン、早く来いよ!!)」
ギィイイン!
吉岡「おーらい!!」
打球はファーストへの大きなフライ。なんという球なのだろうか。あそこまで遅い球がストライクゾーンに入るなんて。




