第二十話 第十三部 買い物での出会い
亜弓「あ、私買い物行かなくちゃいけないから今日はこっちから帰るね。」
由紀「わかった。電車でしょ? 気をつけてね。」
私は由紀とは別の方向へと歩き出した。木曜日に練習の休みをもらったので練習着を新調するのと手入れ道具が尽きてしまったので買わなければいけない。早歩きで電車に乗ろうと歩く。早めに買って家に帰ってゆっくり体を休めよう。
亜弓「えっと…。」
私はスポーツ用品店に到着すると野球コーナーへと向かった。野球コーナーに到着するとなぜか体が野球道具コーナーへと足を運んでしまう。もう自分の愛用グローブがあるのはわかっているけど、誰が何を使っていたかなど気になってしまう。
亜弓「あ、これは…由紀が左投げの時に使っているグローブ…。」
由紀のグローブとそっくりなものが置いてあった。これを大事に使い続けていくのだと思うと…あのグローブは恵まれているのかもしれない。もしグローブにも愛情があるのであれば…。
亜弓「さてと。」
私はグローブをおいて道具をまず見た。愛用している道具があるからそれをいつものように手にとる。そして練習着を見に行く。
亜弓「といっても…何か今流行のものとか、使いやすそうなのって何があるかな。」
私はサイズを見ながら手にとって感触を確かめる。私に合うものを探していかなきゃ。道具はこだわりたいし…。
エヴリン「無いなぁ…。」
あれ? 女の子が野球コーナーで何か探している。あの子も野球をやっている子なのだろうか。しかも迷っているみたいだし…。
亜弓「あの…すみません。何かお困りですか?」
エヴリン「あ、えっと、はい。」
その女の子はカタコトな日本語で返す。外国人なのだろうか。とにかく困っているみたいだから…。
亜弓「何を探しているのですか。」
エヴリン「練習着、です。なかなか、見つからなくて。」
女の子は苦笑いで答える。なんだか本当に困っているみたいだ。ちょうど私も探している所だし…。
亜弓「あ、なら私も探しているから一緒に探すよ。」
エヴリン「本当、ですか! ありがとうございます。」
女の子はうれしそうに答えてくれる。私は再びユニフォームを探し始める。あの女の子にも合うサイズ、そして使いやすそうなものを探さなければ。
亜弓「えっと…これは…違う。これかな?」
エヴリン「大丈夫…かな。」
複数探しているとようやく良さそうなのがあった。私は手にとって女の子に渡す。女の子も触って確認すると笑顔になって私の顔を見る。
エヴリン「ハラショー! これいいですね。」
亜弓「よかった、私もこれでよかったから…。」
ハラショー、ということは…ロシアの人なのかな? ロシアの人でも野球やっている人がいてすごくうれしい。私は買い物かごに入れてレジへと向かっていく。
エヴリン「えっと、いまおいくつですか?」
亜弓「いまは高校一年生ですよ。」
エヴリン「それなら、一緒ですね。」
亜弓「そうなんだ! 奇遇ですね!」
この女の子も高校一年生なのか。私と女の子はレジにかごを置いて財布を出す。そしてお金を払うと手提げ袋をもらい、出口へと向かう。
エヴリン「本当に、ありがとうございました。」
亜弓「いいのいいの。気にしないで…。えっと…名前は?」
エヴリン「私、エヴリン・ブルースター。よろしく。」
亜弓「よろしく。私は日高亜弓。」
エヴリン・ブルースター、なんだか美しいというか…良い名前。仲良くなれるといいなぁ。
茜「あ、いたいた。エヴリン!」
エヴリン「あ、茜。」
茜「あれ…この人は?」
エヴリン「練習着を、一緒に探してくれました。」
茜「松江学園の亜弓…だよね。」
亜弓「あ、はい。」
なんで私の名前を知っているのだろうか。それに学校名も。この人も…なんだか不思議な感じがする。
茜「ごめんね、エヴリンが迷惑かけて。私は初宿 茜、純涼高校の一年生。投手よ。」
亜弓「純涼高校!? ってことは練習試合で…。」
茜「ちょっと早めに関東にやってきたの。試合ではよろしくね。そしてエヴリンもうちのチームメイト。」
エヴリン「私も、投手です。よろしく。」
まさか…この人たちが敵チームの人たちだなんて。しかも女子で野球を…。なんだかうれしい…。
亜弓「うん、よろしくね! 試合楽しみにしているね!」
私は茜とエヴリンに手を振って別れた。後は試合で…もう一度会うことができる!
エヴリン「あ、試合の後、連絡先交換しましょう。」
亜弓「うん、いいよ!!」
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