第十八話 第三十八部 超えられるもの。覚醒。
暁美「(ツーアウト…ここは打者に集中すれば問題ない。)」
武蔵「(この投手から打つには…ストレートを叩くか変化球を叩くか決めておかないとな…。可能であれば、松江学園で戦った時の対策法が…役に立つかもしれない!)」
ツーアウトランナー二塁、淳和さんが甘い球を見逃さずしっかりと打つことができた。ワンチャンスが出来てきた。バッターは四番の勝浦さん、これなら…。
瀧澤「(さてと、正念場だぞ。しっかりいけよ。)」
桜「打たせてもいいよ!」
チームメイトがさらに声を出している。これだけのメンバーが声をかけてくれると心強い限り。暁美さんはどんなピッチングをしてくれるのだろうか。
暁美「っら!」
シュゴオオオ バシン!
ボールワン!
瀧澤「いいよいいよ、ナイスボール!」
桃音「異様に慎重ね。」
由紀「当然だと思いますよ。」
亜弓「でも…何か不思議な感じがする。」
何か…何かありそうな感じが…。不思議な感じがする。
勝浦「(さあ、感覚はつかんだ。来い!)」
暁美「ふしっ!」
シュゴオオオ
勝浦「(踏み込めっ!)」
ザッ ギィイイイイイン!!
暁美「えっ…。」
瀧澤「ライト!」
打球は弾丸ライナーでライトの頭を超えていく。まさか…暁美さんから…!
ガシャン!
淳和「よっしゃ!」
淳和さんがらくらくホームへと帰っていく。この夏の大会で…始めて暁美さんが失点した。こんな投手は普通ありえないと思うけど…そんなありえない投手から勝浦さんが打つことができた。
武蔵「っだあああ!!」
勝浦さんが大きな声を出して腕を突き出している。こんな展開がやってくるなんて誰もが考えてなかっただろう。それを一番感じているのは…富良野学院のメンバー全員だろう。
桜「(さすが…高校三大バッターの一人…。暁美でも厳しいわね。でもそれよりはあの淳和への甘い球、落ち着きがなかったかしら?)」
暁美「やっぱすごいね! これだから野球は楽しいよ!」
暁美さんは笑っていた。それは野球を楽しんでいる顔に見えた。裏で怒っているような感じは見受けられない。でも…何かギアが変わった気がする。雰囲気がまた一段と…。
瀧澤「(さて、解禁するか?)」
暁美「(あったりまえじゃん!)」
シュゴオオオ バシーン!
ストライクワン!
武蔵「…えっ。」
瀧澤「(捕る身にもなってくれよー、動くから神経使うんだぞ。)」
六実「何…この球は…。」
ストレートが曲がった…それもツーシームって感じではない…まさか…ムービングファストまで投げれるのだろうか。それもフォーシームと全く同じ球速で…!?




