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ドクターK少女  作者: レザレナ
第十七話 亜弓対六実 三回戦、御影大松戸高校
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第七話 第七十二部 悔しさの涙

六実「ったあああ!!」

淳和「勝ったよ! 六実!」

武蔵「よく投げきった! ナイスピッチング!」

 由紀が…空振り三振…。試合が…終わった。負けた…。府中先輩たちの最後の夏が…終わった…。

卜部「…くそ…くそっ。」

芦毛「う…うぅ…。」

府中「…皆、整列だ…!」

 府中先輩は涙声になりながら声をかける。目には大粒の涙がぼろぼろと流れ出ている。私はあふれ出てきそうになる涙をこらえながらベンチから出る。そして前を見ると由紀が一人、バットを片手に持ったまま…うつむきながら立っていた。私は誰よりも早く由紀のもとへと走っていく。

亜弓「……由紀。」

由紀「ごめんね……私のせいで負けちゃった。…打てなかったから…。」

亜弓「いいの……私が…ぐすっ、打たれなければ…。」

 由紀はうつむいた顔を上げて帽子を取る。そして振り返り、私の顔を見た。

由紀「亜弓は…悪くないよ。」

 由紀の顔は笑顔だった。だけど…その笑顔から涙が流れている。…由紀。私は…。

亜弓「ごめんね…由紀!」

 私は強く由紀を抱きしめた。由紀は私の肩辺りに顔を押し付け、大きく泣いた。私も涙をこらえきれず、泣いていた。球場全体から大きな拍手が沸き起こる。健闘をたたえる大きな拍手。でもそれは…私たちの方からは悔しい拍手にも聞こえた…。

美和「ううぅ……。」

萌「先輩…。」

美琴「負けた…ぐすっ…。」

千恵美「(負けたから…先輩たちは…。)」

 私たちは整列する。目の前にはユニフォームが真っ黒になった相手チームの姿があった。目の前には…六実さん。

審判「礼!」

皆「したぁ!」

 私たちは挨拶をして前へと歩いていく。そして六実さんが目の前にいる。

六実「ナイスピッチング…すごかったよ。試合としては私たちが勝ったけど…もしあの場面で打たれていたら…。」

亜弓「いえ…六実さんたちの力が何枚も上でした。良い経験が出来ました。でも……悔しいです。」

淳和「すごいバッティングだったわね。御疲れ様。」

由紀「私の力がまだまだでした……。……ありがとうございました。」

府中「優勝しろよ。頼むぜ。」

武蔵「ああ、もちろんだ。あ、それと府中。」

府中「なんだ?」

武蔵「次は…プロの舞台で戦えるといいな。」

府中「……そうだな。」

 私たちはベンチの方へと戻っていく。その中で…一人、由紀だけが途中で立ち止まった。

由紀「六実さん!」

六実「ん?」

 六実さんのことを呼んだ。いったい何を話すのだろうか…。

由紀「次は負けません!」

 由紀は涙声で大きく叫んだ。六実さんはニッコリと笑って私たちを見る。

六実「その悔しさをバネにして…もっと強くなって勝負しよう。でも…その時も負けないからね。」

由紀「約束…です!」

 由紀は悔しそうな顔をしてベンチ側へと戻っていく。私も…悔しい…そして…ごめんなさい。私のせいで…先輩たちの夏を…終わらせてしまった…。


松江学園高校、3点差で御影大松戸高校に敗北。

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