第十七話 第四十九部 義手のエース
府中「今の…何があった?」
卜部「うっそだろ…。」
六実「うっ……。」
六実さんは痛そうな顔をしているわけではなかった。だけど必死に腕を隠そうとしている。利き手ではないほうの腕が義手だということがバレてしまう。そして…六実さんにとってとても辛い状況にもなってきている。ヒットにはなったけど…これは…。
淳和「六実!」
武蔵「……。」
監督やチームメイトは六実さんの周りに集まっている。球場もざわつき、何が何だか分からない状況へと変わっていっている。ただ、その様子を心配する人が大半だった。この状況の中…六実さんたちは…。
対馬「大丈夫か…?」
日向「これは…どうするか…。」
ただただ、あわてている。だけど…後ろで勝浦さんがグローブを持って六実さんの所へと向かっていく。
武蔵「まだ…終わってはいないだろ。技手は…予備あるか?」
六実「……一つ……。」
武蔵「だったら…取り替えていけ。泣くことないだろ。むしろ誇りに思った方が良いぞ。いままで義手でやってきたんだから。そんな中頑張ったってことは相当すごいことだからな。」
淳和「…そうよね。ここで泣いても仕方ないよ。」
六実「わかった…でも私は非難されないかな…?」
淳和「そんなことないよ。私の目を見て。信じて…。」
六実さんは立ち上がって歩き始める。右手にグローブを持って。それを見ている球場の観客たちは大きな拍手を送った。全体が…そう、敵味方関係なく…。
暁美「まさか…そうだったのね。」
桜「でももしこれで腕があったらもっとコントロールと球威が…。」
桃音「こりゃもしかすると私たちやられるかもよ。」
瑞華「この試合…亜弓や由紀たちは勝てないのかな。」




