第十七話 第三十七部 球を見ていけば
友亀「しっかりとボールを見ていけ。」
亜弓「分かってます。」
私は友亀の声を聞いてバッターボックスへと移動していく。目の前には六実さんが気持ちをあらわにして私を見つめている。
亜弓「お願いします…!」
私はバッターボックスに入るとお辞儀をして構える。六実さんから不思議なオーラが見えている。いや、これはすごい人にしか見えないようなこのオーラ。やっぱり六実さんはすごい。
由紀「亜弓…。ボール良く見てね!」
由紀からもボールを見るように指示をされた。球筋のクセが分かれば…由紀も打てるのかもしれない。やれることは何でもやってみせる!
六実「(悪いけど…!)」
ザッ
対馬「(んなバカな。)」
私はセーフティーの構えをする。これで少しだけでも揺さぶりをかけることができるなら…。
シュゴオオオオ バシン!
ボールワン!
六実「(球筋を見にきたわね。)」
私は初球を見送った。だけど六実さんは笑っていた。これは自分の考えていた作戦が完全にばれてしまったようだった。こうなってしまったらストレートは投げてこない。せっめてものの全てカットはしなければ。
六実「(バレバレよ。そう簡単にやらせないわよ。)」
六実さんはしっかりとサインを確認するとすぐに腕を振り上げる。次は何が来る。
シューーーーグッ バシン!
ボールツー!
対馬「(あれ? これ入ってないか。)」
カットボール。ギリギリのコースに投げてきた。それだけ集中して投げてきているということだ。だから…私も集中してボールを見なければ…!
シューーーーグッ バシン!
ストライクワン!
ググググッ バシン!
ストライクツー!
今度はシンキングファストボール、遅いサークルチェンジと投げてきた。他には…あと三種類あるはず。それをカットしていけば…あの球を投げてくれるはず!
シュッ グググッ
ギィン! ガシャン!
ファールボール!
六実「(あてることはできるのね。ならこれは…!)」
ググググッ ギィン!
ファールボール!
よし、これであとあの球しか投げられなくなった。ドロップ、あの落差のある変化球をもう一度…見せて!
六実「……。」
六実さんが気合を入れて腕を振り上げる。手はしっかりと握っている。よし…変化球が来る…!
シュッ シュゴオオオオ
亜弓「(内角高めに…ここか…。)」
バシーーン!
ストライクバッターアウト!
六実「っし!!」
ま…まさかのストレート。一度見せた球をもう一度…ここで投げるなんて。いや、これは私の読み負けだ。




