第十七話 第三十一部 決め球勝負
海鳳「(おいおい、マジかよ。)」
府中「(頼むぞ。羽葉が打てなかったら…他打てる選手がいなくなるぞ。手が付けられなくなるだけじゃなくて、流れも向こうに持っていかれる可能性もあるからな。)」
由紀はさらに集中してかまえる。それに答えて六実さんも集中してかまえる。頼りになるのは由紀しかいない。由紀が打ってくれなければ…こちらのムードが。
シュルルル ググググッ ブシィ バシン!
ストライクツー!
由紀「くっ。」
六実「ふぅ…。」
対馬「ナイスボール!(ふぅ、紙一重だな。)」
また空振り、これでツーストライク。普通の投手ならここでストレートを投げて緩急で抑えに行くけど由紀はその対応がすごい。だから…ここでストレートは投げない。かといってほかの変化球は投げてこない。六実さんならあの変化球をもう一度投げてくるはず。由紀はそれが勝負球だと分かっているはず。だからこの一球が勝負を分けてくる…!
六実「(低めに…もう一度!)」
由紀「(来る。それを叩いて!)」
六実さんが足をあげて投げる体勢に入る。
ダッ
新天が走った。ツーストライク、そして変化球を投げると分かっていれば必ず走れる。そして揺さぶりをかけられれば!
六実「っら!」
シュルルル
ダッ
由紀「(ステップして前に出れば曲がる前に!)」
由紀がバッターボックスの前へとステップする。そして振りにいく。これなら…打てる!
ググググッ ブシィ バシン!
ストライクバッターアウト!
亜弓「えっ!?」
六実「っし!」
淳和「ナイスピッチング六実!」
由紀「(今…私が前に突っ込むかと予測して早めに変化させてきた…。やられた…せめてもののカットはしたかったのに…それすら出来なかった…。)」
由紀が…三振。こんなこと信じられない。私たちはただ、呆然、唖然とした表情で由紀を見つめていた。




