第十七話 第三十部 少しの隙を
シュゴオオ ブシィ バシーン!
ストライクワン!
新天「(このコースは無理だったか。)」
対馬「(思い切り振ってきたな。悪あがきか? それとも…。)」
新天の顔色は落ち着いていた。でも…体からは絶対に打ってみせるというオーラが見えた気がした。あの気持ちの入り方は何かやってくれそうな気がする。
由紀「(次は私。もし新天が塁に出ればホームまで返せる方法としては左中間に打つしかない。しかし六実さんの球を打つにはかなり技術がいる。だとしてもわたしなら出来る。)」
シュゴオオオ バシン!
ボールワン!
対馬「(あれ、このコース前にストライク言ってなかったか? まあ仕方ない少し外に出たのだろう。)」
新天「(ストライクかと思った。)」
ギリギリの所を投げてくる六実さん。そしてギリギリで見極める新天。甘い球が行けば持っていけそうな気がする…。
六実「(サインは…カットボールね…。)」
六実さんがサインにうなづいて腕を上げる。そして踏み込み投げる。
シュッ
六実「(あっ、コースはいいけど曲がらないと思う…!)」
対馬「(これはヤバイ。)」
新天「(これしかない!)」
シューーー ギィン!
海鳳「よっしゃ!」
打球はピッチャーの頭上を越えてセンター前へと飛んでいった。変化しなかった球をしっかりと捉え、綺麗に打っていった。新天は一塁ベースを踏むとオーバーランをしてベースへと戻っていった。
新天「……よし。」
新天はスタンドに向かって軽くガッツポーズをとった。それに観客席が答えて声を上げる。そして…名前が呼ばれる。
ウグイス嬢「六番、レフト、羽葉由紀。」
由紀「……お願いします!」
由紀がバッターボックスに入る。ただ、それだけでも球場は大きく沸いた。ここまで高打率、おそらくこの夏の大会で一番の打率を残しているかもしれない。だから…ここ一番で期待できる。
六実「さてと…勝負ね。」
由紀「ふぅ。」
由紀は右打席に入りゆっくりと構える。セットポジションになったとしても六実さんの球威やコントロールが変わるわけでもない。
新天「(お前にまかせたぞ。)」
武蔵「(大丈夫、遠江ならやれる。)」
サインにうなづいて腕を振りかぶる。そして…大きく腕をしならせて。
六実「っふぅ!」
シュルルル
由紀「(初球から…! 行く!)」
ギュルル ブシィ バシン!
ストライクワン!
由紀「えっ。」
由紀が…空振りした…!?




