第五話 第十部 見逃して、怪我をせず。
由紀「おっけ、それでいいよ。」
そういって出迎えてくれたのは由紀だった。
亜弓「なんで私はバットを振らなくてよかったの?」
由紀「怪我とか怖いからだよ。」
亜弓「でも私はあまり怪我しないよ。」
由紀「そうとは言っても、私はソフトボール出身、亜弓は軟式野球出身でしょ? 自打球が当たったらとても痛いよ。怪我するのは当たり前だと思う。怪我しなくても何かしらで必ず投球に影響が出ると思うよ。だから気をつけて欲しかったの。」
そういって由紀はグローブを私に渡した。そして由紀は友亀のところに近づいていった。
由紀「ねえ、この回の前のキャッチボール今だけやらしてくれる?」
友亀「ああ、かまわないよ。」
そういって由紀は自分のグローブをはめてベンチを出た。
由紀「亜弓っ、やろう!」
そういって由紀はテクテクと歩いていった。なんであんなに由紀はやさしいのだろう。そんなことを疑問に思いながらキャッチボールをした。
パシーン
パシーン
由紀のミットから良い音が響く。普通のグローブなのにミット並の良い音が出ている。恐ろしい。いったいどんなセンスの持ち主なのだろう。
友亀「………。」
友亀も目を点にして無言のまま見ている。友亀でさえもあのセンスには驚きを隠せないのか。やっぱり由紀って何者なのだろうか。本当に羨ましい。
ストライクバッターアウト!
あ、あるぇ?伊沢はあっけなく三振をしてしまったようだ。相手の牛田投手がどんどん調子が上がってきてるのだろうか。これは私がキッチリ抑えなければ…。
由紀「リラックスしていこう。」
そういって由紀はボールをぽーんと投げて守備についていった。