第十七話 第十九部 振り方も
由紀「亜弓、ゴメンね。」
亜弓「大丈夫だよ。私のやることはこれ以上点を取られないように投げるだけだから。」
由紀「そうだね。次は必ず戻ってくるから。」
私は由紀とグータッチしてマウンドへと向かっていった。二回の裏の攻撃が終わって次は三回の表、この回の先頭バッターはたしか六実さんからだったはず。
六実「ナイス送球。」
淳和「ありがとう。次打席でしょ? 頑張って。」
六実「うん。」
武蔵「さっきのは仕方ないな。相手も本気で点を取りに来ている。自信を持って投げろ!」
六実「はいっ!」
対馬「勝浦先輩。俺のリード、あのキャッチャーに読まれていました。羽葉のヒットはぐうの音が出ませんが…。」
武蔵「そうだな。…常に警戒を怠らないように、リードの仕方を変えてみろ。」
対馬「はいっ!」
ロージンバックをポンポンと二回手にあててベース横に置く。息は吹きかけず、グローブにボールをパンパンと投げるようになじませた。そして右打席には六実さんがいる。打撃だと少し雰囲気が変わる。かなり冷静に構えている。そしてプレイがかかると友亀のサインが来る。初球スラーブを内角に…!
グググッ バスン
ストライクワン!
六実「(変化球だったから分からないけど…少し出所が分からないようには見えたわね。)」
何かじっくり見られているような気分だった。早く抑えないと情報を持っていかれそうだった。それを分かっているかのようにサインが来た。次はサークルチェンジ。低めにボールになっても良いから!
シュッ グググッ バシン
ストライクツー!
六実「(これも入るのね。でもさっき私がドロップを投げたときと同じコースだからそうだよね。)」
ツーアウトに追い込まれたとしてもまだ表情は変わらない。いたって冷静だ。私はボールを受け取ると感触を確かめるように握った。
友亀「(次はカットボールで。)」
私はサインにうなづいて振りかぶる。あのミットめがけて!
シューーーー
六実「(ストレートじゃないね!)」
グッ ギィン ガシャン!
ファールボール!
由紀「(やっぱり振り方…。)」
友亀「(なんだ…?)」
フォロースイングが最後の最後で左手を離すように振った。別に負担がかかるわけじゃないけど…やっぱりちょっと変にも見えた。私はボールを受け取り、サインを見る。
友亀「(これならストレートで抑えられる。)」
ストレート。構えている場所は内角。私は足を上げて大きく踏み込む。
亜弓「っふ!」
シュゴオオオオ
六実「(これね! すごい…!)」
ブシィ ズバァン!!
ストライクバッターアウト!
亜弓「っし!」
これで前の回から続いて四連続奪三振、六個目の三振を取った。




