第十七話 第十部 六実のピッチング
対馬「ナイスボール!」
自信を持った表情、そしてあの雰囲気。他の人には感じられないあの独特な感じは六実さん独自のものだろう。球に気持ちがこもっているように見える。
六実「ふぅ…。」
テンポ良く六実さんは投げる体勢に入る。相手に全く考える時間を与えない作戦なのだろう。卜部先輩から見ても戦いづらい相手だろう。
シューーー バシン!
ストライクツー!
卜部「(ヤバいな。こんだけ厳しいコースばかり攻められたら、こっちも攻めようにも上手くできねぇ。)」
由紀「うーん。」
そんな中、由紀は一人頭を抱えて悩んでいた。いったい何を考えているのだろうか。
亜弓「どうしたの? 由紀。」
由紀「いや、あの投げ方…やっぱりそうなのかな。」
私はそれを聴いてハッと思い出した。そうだ…六実さんは左腕が…。
亜弓「由紀にしか聞こえない声で言うけど…左腕ないの。」
由紀「……やっぱり。それであの投げ方なのね。でも…相当な努力を積み重ねてきたのだろうね。それさえ分かってしまえばもういい。本気で打てるから!」
由紀は嬉しそうな顔をしてベンチで笑っていた。
シュルルルル
卜部「(縦の変化球…外れる!)」
バシン!
ストライクバッターアウト!
卜部「なっ。」
対馬「ナイスボール!!」
卜部先輩は一球も振ることが出来ずに三球三振になってしまった。けどこのコントロールは尋常じゃない。そしてこの変化球、打ち崩すのが難しい投手だ。
武蔵「ワンアウト!」
淳和「ナイスピッチング! ワンアウトね!」
そしてバッターボックスに府中先輩が向かっていく。府中先輩なら三振ということはなさそう。だけど…ヒットを打つのは難しいかもしれない。もしかすると由紀でさえも…。
卜部「あれは相当なコントロールだ。気をつけろよ。」
府中「わかった。」
府中先輩は左打席に入った。塁に出ることを最優先したのだろう。それだけしないと厳しい相手だということだ。
府中「お願いします。」
上野「(いいね、雰囲気あるね。)」
府中先輩はどっしりとバッターボックスで構えている。集中している証拠だ。サインが決まり、六実さんが投げる。
シューーーー
府中「(これはいける!)」
グッ ギィイン!
府中「(曲げたのか!?)」
打球はセカンドの方へ転がっていく。しかしボテボテではない、そこそこ強い当たりだ。打てない…わけではないけど確実にアウトを取られる所に投げてくる。
上野「しゃ!」
セカンドの上野さんがとってファーストに送る。もちろんながらアウト。これでツーアウトになった。
海鳳「なんつう投手だよ…こっから見てもすげえ雰囲気だぜ。やりがいがあって…たまらないぜ!」




