第五話 第九部 悔しさと疑問の打席
由紀「ナイスピッチング!」
由紀が私の背中をポンポンと叩いた。私と由紀は顔を合わせてニッコリと笑った。由紀がいるだけで私のムードも上がっていく。その期待に私も答えていく。由紀がいるからこそ私もいるんだ。
友亀「日高、俺の次だろ? 準備しておけ。」
亜弓「はいっ。」
私は急いでヘルメットをかぶっていった。
由紀「亜弓。」
私がバッティンググローブをはめていると由紀がやって来た。
由紀「もし友亀が塁に出たらバント、出なかったら無理に打ちにいこうとしないで。」
亜弓「わかった。でも打ちにいこうとしないってどういうこと?」
由紀「亜弓は今投手でしょ? 怪我されたら困るからだよ。打てそうな球だけ振ってきて。」
バシーン ストライクバッターアウト!
私が準備を終えたころには友亀が三振に倒れていた。
由紀「わかった? 言った通りにするんだよ。」
そういって由紀はヘルメットにコンッと軽く触っていった。打てそうな球だけ…でもどういう意味なんだろう…。
館川「おしかったな。」
友亀「おぉ、すまねえ。」
館川「球がどんどん良くなってきやがるな。」
友亀「クリーンナップに任せるのが一番だろう。あと羽葉にも。」
館川「なあ、お前なら投手の気持ちってのが分かってくれると思うんだけどさ。」
友亀「あぁ。」
館川「悔しいよ、先発で投げれないのが。」
友亀「……。」
ガチャッガチャッ (キャッチャー防具をつける音)
館川「俺だって何も無しで合宿を終えるのはいやなんだ。ここでアピールしてベンチ入り…いや、エースナンバーだって貰いたいんだ。」
友亀「だな。皆が必死こいて背番号を貰いたいだろうからなあ。」
館川「だから、この試合で俺は特訓していたある新変化球を使おうと思っている。それは――――友亀、お前なら止められるか?」
友亀「あぁ、もちろんだ。」
館川「頼んだぜ。この試合で本当のエースは俺だってみせつけてやるぜ。」
ツーストライクツーボール。決して打ちやすいカウントではないけど、打とうと思えば打って良いカウントだ。でも由紀からの指示は打てる球だけ打っていけ。そういわれても…。すでにピッチャーは足を上げている。
シューーーー バシン! ストライクバッターアウト!
結局一回も振らずに三振になった。しかも球は全部厳しいところだ。本当にこれでよかったのだろうか…。