第十六話 第二十四部 天才打者はここに
ウグイス嬢「九番、沖田君に代わりまして、羽葉。背番号18。」
由紀「お願いします!」
由紀は丁寧に挨拶をしてバッターボックスに入る。この場面、確実にヒットが欲しい場面だ。そこで打率がものすごく高い由紀が代打で出た。普通ならレギュラーに選ばれてもおかしくないはずだけど…ここは監督の考えなのだろう。
大嶺「(この前はスタメンで今回は代打か…松本、気合入れていかないと厳しいぜ。)」
松本「(こんなバッターと勝負できるんだ。おそらく世代の中では最高クラスだろう。…あいつを除いては…。)」
松本投手は大きくため息をついてグローブを叩いた。由紀は今回左打席。どんな作戦を由紀は考えているのだろうか。
由紀「(おそらく…初球は変化球で来る。仮に違ったとしてもこの球速なら対応できる。変化球を狙うなら速い変化球。)」
大嶺「(何を投げるべきか…何を投げても打たれそうなこの雰囲気。とりあえず様子見で厳しいところいくぞ。)」
ピッチャーの松本はうなづいて腕を振り上げた。そして思いっきり踏み込み投げる。
シューーー
由紀「(この回転は…スプリット!)」
グッ ギィイン!!
松本「ちっ!」
打球はピッチャーの頭上を越えてセンター前へと転がっていった。さすが由紀、初球からヒットを打つなんて。
瞳「由紀ー! ナイスバッティング!」
真希「さすが!!」
由紀はスタンドに向かってブイサインを送った。そしてそれと同時に球場が沸く。これだけ球場の雰囲気をガラリと変えてしまう由紀が本当に恐ろしいほどすごい。もし由紀が敵だったら…。
卜部「ふぅ…。」
この場面で卜部先輩がバッターボックスに入る。そしてすぐにバントの構えをした。ここは確実に送っていく作戦だろう。しかし由紀には足もある。盗塁という作戦だってありえるだろう。このいくら堅い守備だとしても由紀をアウトにすることはほぼ出来ないだろう。
シューーーー
卜部「(ここだ!)」
ギィッ
卜部「やべっ。」
打球はフワッと浮いてしまった。前の方へと浮くがこれはギリギリ落ちるかもしれない。だけどキャッチャーがものすごい反応で飛びついてきた。
大嶺「っらああ!」
バシン! アウト!
由紀「っと。」
由紀はそれを見てすかさず一塁に戻った。たった少しのミスがアウトにつながってしまう。相当な集中力だ。
卜部「すまねぇ。」
府中「大丈夫だ。まだ終わったわけじゃない。」
府中先輩はバットをコンコンとスパイクにあてて相手投手を見た。ワンアウト一塁。キャプテンの一打が試合を左右するだろう。




