第十六話 第十四部 意地の投手戦
ギィン!
新天「(カットボールか!)」
打球はセカンド左へのゴロ。なんでこうも簡単にアウトになってしまうのだろうか。あのピッチングは私たちの打線では通用しないというのでもあるのか。そしてこの小雨だというのにコントロールが一切乱れない。守備陣も声を出してしっかりと守っている。一点が果てしなく遠い試合になりそうだ。
芦毛「上等じゃねえか。絶対に俺が打たせない。必ず一点取ってくれ。」
新天「すみません。ありがとうございます。」
芦毛「謝ることはない。チャンスは必ずやってくる。」
中山先輩は相手投手の様子を伺うように構えている。それにしてもなんて落ち着きのある投球なんだろうか。私たちの想像以上の投球術を見に付けている。
シューーー バシン!
ストライクワン
中山「(ちっ。)」
またストライクを入れてきた。ポンポンと投げるこの投球は流れを止めさせられる。このままだと…。
ギィン!
中山「くそ、打ち損じた!」
大嶺「ショート!」
鬼頭「っしゃあ!」
バシーン! アウト!
松本「しゃあ!」
カンペキな投球であっという間にアウトになってしまった。相当自信がないと出来ないことだ。ここまで強気のピッチングを見せてくるとは…。
府中「日高、心配そうな顔するな。」
芦毛「まだ終わっちゃいないんだからな。点すら取られていないのだからまだ分からないぜ。」
先輩はそれでも強気の姿勢を見せていた。そうだよね、私が弱気になってどうする。強気にいかないと。
三由「頑張ってね、戸井。」
府中「大丈夫、俺は打ってくるから。三由もサポート頼むよ。」
バシーン!
ストライクバッターアウト!
芦毛「っしゃ!」
バシン!
ストライクバッターアウト!
松本「っし!」
試合は一向に動く気配がない。五回裏が終了してお互いにノーヒット。芦毛先輩は4奪三振とファーボール一つのほぼ完璧なピッチング。対する松本は3奪三振とファーボールは無し、こちらも完璧なピッチングを見せていた。どちらが先に崩れるかの勝負になってきた。




