第十六話 第九部 決め球、SFF。
府中先輩が集中して打席に立つ。後ろの海鳳もピッチャーを凝視してどんなピッチングをするのかしっかりと見ていた。もちろん相手の投手もものすごい集中力だ。そして投じた第一球。
シューーー ギィン!
ファールボール!
いきなり初球のストレートを当ててきた。あの投手もものすごい気迫で投げている。これは相当な気持ちの勝負になってきそうな気がする。だけど…府中先輩の顔には余裕がなく、相手の顔には余裕がある。何でだろうか。
シュルルル ギィン!
ファールボール!
変化球にもすぐに対応できている。それも前に飛ばしてのファールボールだ。決して悪くはないのに…なぜあの表情。苦戦しているのだろうか。
府中「(なんつうコントロールだ。狙い球を絞れねえ。)」
由紀「相当やるね、あの投手。」
亜弓「えっ?」
由紀「コントロールが素晴らしい。やっぱりすごい投手なだけあるよ。でもそれ以上にすごいのは…あの自信。よほど自分の球に自信を持っているのだろうね。強気のピッチングができている。
大嶺「(一筋縄ではいかないな。同じ球を投げたら確実に打たれてしまいそうだ。なら…ここで使うか。)」
松本「(ああ、あいつもあんな球を投げてくれたんだ。俺だって…みせてやる!)」
シューーー
速い球。ストレートかカットボールか?
府中「(これなら…打てる!)」
ブン! バシーン!
ストライクバッターアウト!!
府中「なっ?」
海鳳「あの速度で落ちるのか!?」
あの速い速度で落ちる変化球…いったい何なのだろうか。由紀なら分かるかもしれない。
亜弓「由紀、今の球って…?」
由紀「あれは…スプリットフィンガーファーストボール…。あんな球投げれる高校生がいるなんてね。打ちたい…打ちたいよ!!」
私の隣から誰よりもすごいオーラを発している人がいた。SFF…これは相当厄介な球になりそうだ。




