第五話 第六部 ナイスバッティング、由紀!
空振り三振を取った私はピョンと跳ねてベンチへと帰っていった。
由紀「ナイスピッチング!」
由紀が近づいてきてハイッタチを求めてきた。私はそれに答えてパシンと叩いた。
友亀「いいね! 変化球もキレているよ。」
亜弓「ありがとう。」
私は皆に笑顔で出迎えられた。すごくうれしい。皆のためにも、自分のためにも頑張らなければ。私はジャグからコップにスポドリを入れて口に含んだ。スポドリがこの暑さの中、体中にに染み渡る感じがする。それが私の中にある燃料を補給しているかのようだった。
二回の表の攻撃は四番池之宮からだ。彼の力ならどんな投手でも打ってくれるはず。どうやって打つのだろうか。
シュッ ググッ ブシィ!! パシン
ストライクワン!
…あれ? 外に外れるスライダーを強振した。力んでいるだけなのだろうか。
シュッ ググッ ブシン! パスン
ストライクツー!
もしかして、変化球が苦手なのだろうか。全くタイミングも振る場所も違っている。このままでは…。
グググッ ブン!
ストライクバッターアウト!
やっぱり。最後はフォークボールに空を切らされた。池之宮にも弱点があるなんて。これは結構致命的かもしれない。でも次は五番の新天だ。彼ならきっと…。
ブン! バシン
ストライクワン!
あれ? 変化球を空振りした。まさかと思うけれど、彼も苦手ってことはないと思いたい。
キーン!
やった、変化球をとらえた! …けどセカンドが両手を挙げた。
パシン アウト!!
設楽「いいぞいいぞ。ツーアウト!」
塚和「怖くないぞ! 落ち着いていこうぜ!」
これは完全に相手のペースだ。なんとかしないと私も大変になってくる。でもどうすれば…。
由紀「亜弓! 私に任せて!」
そういって由紀はバットをクルクル回しながらバッターボックスへと移動していった。そうだ、由紀ならなんとかしてくれる! 練習のときだって、試合だってあんなにたくさん打っている由紀ならきっと!
新天「くそっ、芯はずしちまった。」
池之宮「はぁ~。」
海鳳「お前がため息つけることか?」
池之宮「お前もアウトじゃねえか。」
海鳳「俺は外野まで飛ばしたぜ。」
だ、ダメだ。ちょっと頼りなく思えてくる。この先が不安になってきた。大丈夫なのだろうか。
塚和「 (こいつ、妙に不思議なオーラが感じられるな。甘いところいったらやられそうだな。厳しくいこう。) おーし、皆しまっていくぞ!」
設楽「おーし、バッチコーイ!」
坂田「どっからでもこい!」
皆が気合を入れている。由紀はあの中で打てることができるのだろうか。でも由紀なら…あれ?何度私は不安になったり安心したりしてるのだろう。ちょっと落ち着かなければ。
シューー バシン! ボール
いきなり厳しいところにストレートが放られた。警戒しているのだろうか。
シューーー バスン! ボールツウ!
また厳しいところだ。由紀は目が良いからミートと選球眼がすごいのだろう。
塚和「 (こいつ、目がついていけるのか? よし次はいきなりだが決め球を使うぞ。)」
牛田「 (マジで? まあアイツの考えていることは合ってることが多いからな。警戒しているのか。それとなんだ、この何処にでも投げたら打たれそうな雰囲気は。こいつ絶対にヤバいぞ。)」
ピッチャーが足を上げて投げた。
グググッ
フォークだ!
キーーーーン
塚和「ファースト!」
芯を捕らえた打球は一塁の頭上に。ファーストは大きくジャンプするが…。
飯田「うわっ!」
グラブの上を越えていった。
ポテン
審判「フェア!」
由紀「よっしゃあ!!」
打球は一塁線に落ちてフェアになった。いきなりフォークを打つなんて、すごい! さすが由紀だ。
米倉「よし走れ!」
由紀は打球をみて二塁へと走って行った。
牛田「設楽!」
設楽「うっらああ!」
ライトからものすごいレーザービームが飛んできた、このままでは由紀が!
由紀「よっと!」
由紀がヘッドスライディングをした。しかも何この遠い距離からのスライディング、まるで飛んでいるかのようだ。
セーーフ!!
タッチプレーにはならずに普通にセーフになった。
由紀「あれ? そんな急がなくて良かったかな。」
亜弓「ナイスバッティング由紀!」
私が大きな声で呼ぶと由紀は右手で親指を立ててニコニコしていた。