第十五話 第四十四部 気合で押し切ろう
横倉「すまない永瀬、無駄にしちまった。」
永瀬「大丈夫だ。俺にまかせろ。俺はこの学校のエースなんだからな。」
ワンアウトランナー三塁、バッターばエースの永瀬が入ってきた。私はロージンバックに手を付け、残った粉を行きで吹き飛ばした。この回をしっかり抑えていかなければいけない。次に投げる投手が少しでも楽になれるように…そして私のためにも!
友亀「(コントロールがもう定まらないからな…全力投球で抑えていくしかない。勢いも球速も変わらないけど…やはり疲れは顕著にでてるな。あと身長と女子だという所だろうか、球が飛ばされやすくなっている。金属バットだったら大して変わらない気がするが…実際どうなんだ。)」
永瀬「(打つなら今しかない。チャンスなんだ。)」
私はサードランナーを見ながら足を上げる。そして構えている所に向かって思いっきり投げる!
シュゴオオオ ブンバシーーン!
ストライクワン!
永瀬「(ふぅ…。見えるぞ。)」
暁美「球に勢いもあるし、投げるときの風格もある。」
桜「だけど疲れには負けているようね。」
瑞華「ここで負けたらダメだよ。一年生のメンツってものがあるから。」
私はボールを受け取ると同時に額の汗をぬぐった。この暑い中、思いっきり投げることができている。しかしこの暑さが私の体力をどんどんと奪っていく。もしそうだとしても…投げなきゃいけない。マウンドはそういう所なんだ!
シュゴオオオ
永瀬「(疲れの色が見えてるぞ。お前の気持ちは分かるぞ。だからここで打つんだ!)」
ギィイイイン!!
友亀「センター!!」
卜部「センターバックだバック!」
センターの海鳳が目を切って後ろに走っていく。そしておおよその落下点に入るとバックホームの準備をしている。タッチアップだ。しかしあの距離は厳しいのではないだろうか。
栗山「卜部先輩! カットお願いします!」
卜部「わかった!」
バシン! アウト!!
緒方「っしゃあ!」
サードランナーがタッチアップした。海鳳からの返球が戻ってきて卜部先輩が捕球する。そしてホームに投げていく。しかしこの距離じゃどうやっても間に合わない。
ザザザザザザ
セーフ!!
緒方「やったぜ!!」
サードランナーがホームを踏んで3点目が入った。これで5対3、その差2点に詰め寄られていた。だけど…まだ怖いと思ってなかった。私は思い切り投げることが出来ているのだから…。もしこれで思いっきり投げられなかったら…本当に精神状態が壊れていたかもしれない。由紀がいなかったら…。
由紀「ツーアウト!!」
由紀が手をあげて指示を出している。そうだ、ツーアウトなんだ。あと一人抑えればこの回は終わりなんだ。踏ん張れ、私。




