第十五話 第四十二部 甲子園初失点
卜部「キャッチャー惜しいよ惜しいよ!」
府中「ピッチャー、切り替えていこう!」
ストライクは入った。あとは抑えていけばよいだけ。サインは…ストレート。思いっきり投げれば打たれることはない!
シュゴオオオ ブン バシーン!
ストライクツー!
緒方「(何力んでるんだよ俺、ここで決めなきゃ…いけないのは分かっているんだ。だけど落ち着け、もうツーストライクなんだ。そうだ、俺たちは勝っているんだ。気持ちがそう行けば気楽になる。よし…こい!)」
よし、ツーストライクで追い込んだ。あともう一球ストレートを投げ込んで…終わりにする。
友亀「(サインは…カットボール。と言いたいが…返事はどうだ?)」
サインが来た。…カットボール。ストレートとほぼ同等の球速のこの球なら相手はストレートだと意識して振るだろう。ん? 偽のサインもある…。わざと首を振る…そういうことね。
緒方「(首を振った? ストレートじゃないのか? だとしたらカットボールか? このキャッチャーのことだ。相当頭がキレてやがる。あーもう深読みするな。来た球を打つ!!)」
私はセットポジションに入って足をあげ、踏み込んで…投げる!
シュゴオオオオ
友亀「(ここから曲がる!)」
緒方「(ノビる感じじゃない。カットボールだ!)」
グッ ギィイイイイン!!
亜弓「あっ!」
友亀「ライト!!」
緒方「(上げすぎたか? いや、伸びてくれるはず!)いけぇえええ!!」
井上「(タッチアップか?)」
打球がグングンライトに伸びていく。府中先輩が走って追いかけていく。府中先輩が思いっきりジャンプする。届いて!!
府中「ぐっ。」
ドッ! フェア!!
緒方「しゃあああ!!」
打たれた。外野の奥まで飛ばされていった。打球ははねた後、フェンスに当たって跳ね返っていく。ランナーが一人、二人と本塁に帰っていく。そしてバッターランナーがサードベースに向かって走っていった。
バシン! セーフ!!
緒方「っしゃあうったぞ!!」
久保「ナイバッチ!!」
桜「ついにつかまったわね。」
桃音「欠点は全力投球によるスタミナ不足ッスね。」
暁美「がんばれ、亜弓。」
ついに失点した。甲子園で始めて点を許してしまった。これで5対2、3点差に縮まっていった。そして次は…五番の横倉。まだ終わってない。次を抑えていけば良いこと!
由紀「ドンマイドンマイ! 切り替えていこう!」
由紀からの声で私の気持ちが落ち着いた。そしてマウンドに守備陣が近づいてくる。こう集まってくれるだけで本当に嬉しい。




