第十五話 第三十六部 打たれたとしても
由紀「大丈夫だよ! 落ち着いていこう!!」
私は由紀の言葉の前にも落ち着いていた。甲子園でいつまでも連続三振はとれると思っていなかったし、ヒットも必ず打たれるだろうと思っていた。むしろ点も取られる覚悟でいたけど…ここまででワンヒットだけ。かなりの上出来な投球だ。だから心の準備は十分に出来ていた。
佐島「お願いします!」
岸蔵「佐島! 思いっきり振れよ!」
ワンアウトランナー一塁で次のバッターは九番の佐島。ここからセットポジションに入るけど、このランナーは足は特に速くない。だけど…牽制だけでも入れていこう。
友亀「(最初はここだ。)」
緒方「さて、セットになって球威はどうなるか。」
私は目だけでランナーを牽制する。そしてすぐに足をあげてクイックで投げる。
シュゴオオオオ ズバン!
ストライクワン!
佐島「(ノビも球威も落ちない。さすが甲子園に来る投手は違うぜ。)」
シューーー ギィイン!
ファールボール!!
佐島「(当てられるか…やはり疲れでフォームが見えやすくなってきているからだろうか。だけど油断できねえ。)」
バットに当ててきた。やはり疲れがやってきている。サインは…一度牽制。私はセットに入って間をおいた。
シュッ
渡部「(はやっ。)」
バシン! セーフ!
タイミングはちょっぴり惜しかったかもしれない。でも良い牽制が投げられた。そしてサイン…。スラーブだ。私はゆっくり足をあげてミットに向かって投げる。
シュッ ググググッ
佐島「(外…振れっ!)」
ブン! バスン
ストライクバッターアウト!
亜弓「っし!!」
スラーブで空振り三振、総合で十六個目の奪三振になった。これでツーアウト。しかし次からは上位打線、一番に戻る。
岸蔵「(俺が打たなきゃ。打たなきゃいけないんだ。)」
友亀「(あせっているのか? ここは直球でしっかり抑えていこう!)」
サインはストレート。低目を中心に!
シュゴオオオ ブン バシーン!
ストライクワン!
岸蔵「くっ。」
久保「力んでるよ! 楽に楽に!」
私から見てあの打者はあせっているのかな?これなら問題なく投げられる。怖くなんてない!
シュゴオオ ギィン! ガシャン
ファールボール!
岸蔵「やっべ。」
助かった。高めのボール球を振ってくれた。そしてファールボール。当たってはきている。だけどこのテンポなら問題なく投げられる。サインはまたストレート。私の武器はこれなんだ…。期待に答える!
シュゴオオオ
岸蔵「(これだ! 振れっ!)」
ブシィ! ズドーン!
ストライクバッターアウト!!
亜弓「よっしゃ!!」
私はガッツポーズをとって私はマウンドを降りていった。これで十七奪三振、私の気持ちが勝っていた。




