第十五話 第三十三部 初球を狙え。
亜弓「っしゃあ!!」
私はガッツポーズをとってマウンドから駆け下りていった。ベンチに戻っていくと拍手で迎えてくれる監督やコーチとかがいた。
日下部「よく投げた! 七回が最後だ。二回、思いっきり投げていけよ。」
亜弓「はいっ!」
七回が最後の回。きっと私のスタミナとかを見て判断したのだろう。そして館川が友亀を呼んでピッチングをするようにしていた。次の回は…私からの打撃だったはず。すぐに準備しないと。
由紀「亜弓、ナイスピッチング。」
亜弓「ありがとう。」
由紀はハイタッチしに私の所へとやってきた。私はその手をタッチするとさらに由紀が顔を耳元に近づけてきた。
由紀「初球甘い球から入るよ。もし打ちたいならそこが狙い目だよ。おそらく球種はストレート。」
亜弓「えっ!?」
初球、甘い球が来る? 何故分かるのだろうか。相手チームの心理状況から考えているのだろうか? それとも変わったピッチャーの特徴を見てだろうか。私はうん? と考えながらもバッターボックスに向かって歩いていった。
久保「(一点でも…一点でも欲しい。)」
横倉「(渡部、お前が踏ん張ってくれれば俺たちにもまだ望みはある!)」
渡部「(永瀬が言ってた言葉、期待に答えるために頑張ってやる。)」
永瀬「(後ろには俺たちがいる。全力で勝負していけ。もし何かあったら…俺がまたマウンドにいく。)」
私は投球練習が終わったのを確認してバッターボックスに入った。狙うなら初球、ストレート。信じるよ、由紀!!
緒方「(初球、まず入れていこう。ストレートだ。)」
ピッチャーがセットポジションからゆっくりと足を上げる。私はタイミングに合わせて足を軽くあげる。
シューーー
亜弓「(ストレート!!)」
ギィイイン!
緒方「センター!!」
いい当たり。だけど当たりはセンター前に落ちるか落ちないか。ヒットになって!
岸蔵「(これなら!)」
バシン! アウト!!
瞳「ああ、惜しい!!」
真希「でもナイスバッティング!!」
私はちょっぴり悔しくなりながらベンチに戻っていった。でも由紀の言ったとおり、当てることができた。なんで分かるのだろうか。
由紀「ドンマイ! 行った所が悪かっただけだよ。この自信をピッチングにもつなげていこう!」
由紀が笑って私をフォローしてくれる。嬉しくなった私はえへへと笑ってヘルメットをベンチに置いた。




