第十五話 第三十一部 甲子園の疲れ
亜弓「よし…。」
私はピッチングを終えて守備の人たちを見た。皆がいつでも打たせて良いといわんばかりの様子だった。由紀も手をふって待っていた。私はもう一度深呼吸をしてホームを向いた。
緒方「(ふぅ…。ここまで全部三振。相当すごい投手なのはわかった。だがこのまま終わりたくない。せめて…ヒット一本でも!!)」
四番の緒方がバッターボックスに入る。友亀もこのバッターのことを十分理解しているだろう。
友亀「(こいつは気合いを入れていけよ。手を抜いたら簡単に持ってかれるからな。)」
友亀が大きく手を見せてストライクゾーンを大きく見せた。私は振りかぶって構えたところに…ストレートを!
シュゴオオオオ バシーン!
ボールワン!
緒方「(コントロールがずれてきたのか?)」
友亀「大丈夫だ! いい球いい球!」
初球がボールになった。ストレートの勢いは落ちていないけどコントロールが少しずつ悪くなってきている。体力はついてきたと思うのに甲子園で投げているといつもより疲れてきている。これが甲子園のプレッシャー、そして特別な雰囲気なのだろう。
六実「大丈夫、あの子はコントロールが落ちてきたとしてもまだ投げられる。」
私は次に構えたところに投げることに集中する。アウトコースの低めに!
シュゴオオオ ブン バシン
ストライクワン!!
緒方「(やっぱりすげえな。)」
空振りをとった。まだストレートが打たれるような心配はない。だったら有効に使えるように…次はスラーブ!
シュッ ググググッ
緒方「(手を出すなら…これだ!)」
ギィンン!! ドッ
ファールボール! 引っ張った打球はファースト線よりファール側に転がっていった。なかなか強いあたりをしてきた。四番はやっぱり違う。でも追い込むことができた。次は…ストレートのサイン。これで…抑える!
シュッ
亜弓「あっ。」
球が真ん中に入っていく。だめだ、これは打たれる!
緒方「(ここしかない!)」
友亀「!?」
シュゴオオオオ ブシィ! ズバーン!
ストライクバッターアウト!!
緒方「(高め!?)」
私自身も驚いた。真ん中に入ったと思われたストレートが高めのボール球になった。友亀も必至に捕球した体制だった。でも結果としては空振り三振、これで十三者連続奪三振をとるこができた。
由紀「ナイスピッチング!!」
池之宮「もしかして俺たちの出番はないか!?」
守備の人たちがモチベーションを高めてくれるように声をかけてくれる。ここまできたならいけるところまで三振を…とってみせる!




