第十五話 第二十八部 ホームラン予告は
永瀬「(さっきとフォームを変えた? そんなふざけた真似は漫画とか空想のなかだけにしろよ。)」
緒方「気合いいれていくぞ!(ただこのバッティングフォームに変えているわけじゃねえ。この風格はただ者じゃねぇ。)」
海鳳が構えると同時にものすごいピリピリとした空気に変わった。あの暁美さんたちにも見えた、オーラのようなものが見えていた。由紀を見ると表情が変わっていた。由紀にも見えているのだろうか?
久保「(嫌な予感がする。)永瀬、気合いいれて投げろ!」
府中「目、離すなよ。」
芦毛「分かってるよ。」
海鳳がいつでも来いといわんばかりの構えでピッチャーを見ている。相手投手を見てみると怒っていた。
永瀬「(ホームラン打つとか、何甲子園で調子こいたこと言ってるんだ。こんな奴に俺が負けるわけがない。)」
緒方「(ここ一番の球だ。思いっきり投げろ。)」
相手投手が大きく振りかぶる。サードランナーがいることを全く気にせずに。由紀の足ならホームスチールできるほどのゆっくりなフォームだったが由紀は第二リードを取っただけ。海鳳のバッティングを見守っている。
永瀬「っらあ!」
シュゴオオオオオ!!
緒方「(よし!)」
海鳳「…!」
ギィイイイイイイイン!!
あっという間だった。海鳳がフォロースイングの後に綺麗にバットを投げる。打球はセンター方向へと大きな打球。センターは一歩も動かず、ただ後ろを見ていた。
緒方「(俺たちはすごい相手と戦えたのかもしれない。こいつらなら…あの富良野学院も…。)」
ドォオオン!!!
バックスクリーンの中段までボールを運んでいった。カンペキともいえるホームランだった。海鳳は全くガッツポーズもとらずに回っていった。球場全体が一気に静まり返る。そして海鳳がセカンドベースを踏むと同時に。
「うぉおおおおおおお!!!!!」
声援が全体に響き渡った。味方チームは大喜び、敵チームはあっぱれの拍手。そして外野席やバックネット裏の席からも大きな声援が起こった。由紀はすでにホームを踏んでいて、そして海鳳がゆっくりとホームベースを踏んだ。
海鳳「恵美先輩! あなたへのホームランです!!」
恵美「……うん。」
千恵美「恵美が泣いてる…。うん、これだけのことされたら泣くよね。」
最後の最後で喜びをかみ締めて戻ってきた。池之宮とハイタッチもしている。
海鳳「続けよ。」
池之宮「おお。」
由紀「ナイスバッティング。」
海鳳「ああ。羽葉もナイスバッティングだったぞ。」
由紀が戻ってきた。そして真っ先に私のところへと戻っていく。
由紀「やったよ!!」
亜弓「うん! ナイスバッティング!」
そして海鳳が全員にハイタッチすると私の元へとやってきた。
海鳳「点はとったぞ、後頼むぞ。」
亜弓「はい!」
これで5対0、さらに点差を突き放していった。




